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船橋屋様 トップインタビュー「企業の伝統と社員の成長でより強く光る“一燈照隅”」

船橋屋様 トップインタビュー「企業の伝統と社員の成長でより強く光る“一燈照隅”」|事例

株式会社船橋屋
代表取締役 八代目 当主 渡辺 雅司様

代表取締役 八代目 当主 渡辺 雅司様|船橋屋様 トップインタビュー「企業の伝統と社員の成長でより強く光る“一燈照隅”」

会社設立 :1952年 10月(創業/文化2年)
事業内容 :くず餅・あんみつ等の製造販売
        和スイーツなど創作カフェの経営
本社 :〒136-0071
    東京都江東区亀戸3-2-14
TEL :03-5858-9721(企画本部事務所)
FAX :03-5858-9725(企画本部事務所)
企業サイト :www.funabashiya.co.jp

江戸時代に誕生したくず餅は小麦粉から精製したデンプンを乳酸菌で発酵させて作る和菓子として、その独特の風味がとても人気です。この味は職人が手作りで伝統を受け継いできました。200年続く老舗と聞くと、安定した経営と組織を思い浮かべるかもしれませんが、現在の会社になるまでにはいくつもの困難もあったと渡辺社長は語ります。

血よりも重いのれんを守る一方 社員のやる気がなくなっていく

200年続く老舗を継ぐというのは並たいていのプレッシャーではありません。利益を出すことに対する責任感が、結果として社員との軋轢を生んでしまいます。
「老舗の嫡男だからといってのれんを継ぐことが必然的に決まっていたわけではありません。現に『船橋屋』は四代目、六代目、そして私の父である七代目はみな養子としてのれんを受け継いできました。まさに"血よりも重いのれん"です。しかし家業を継げと直接的に言われたことはなかったので、大学卒業後は銀行に入行しました。継ぐつもりのなかった『船橋屋』に入社したのは、六代目である祖父が倒れたことがきっかけでした。入社した当時は、"老舗を守る=利益を出す"という考え方があり、たとえ嫡男であろうと追い出されるという恐れが強くありました。そのため、従わない社員を敵視する自分がいました。すると社員は押さえ付けられることに疲れていき、結果として会社に覇気がないことに気づきました。老舗を守ることは利益を出すことなのか。それが自分の使命なのかと、そんな状態になって初めて本当に『船橋屋』でしたいことはなんだろうかと考えました。」

独特の風味が人気のくず餅|企業の伝統と社員の成長でより強く光る一燈照隅
独特の風味が人気のくず餅。職人の手作りで、伝統を守り続けている
作家の吉川英治先生から贈られた書|企業の伝統と社員の成長でより強く光る一燈照隅
本店には、作家の吉川英治先生から贈られた書が飾られている

社員はストーリーテラー 自分の言葉で語れることが重要

渡辺社長は現場の摩擦や葛藤を繰り返しながら、今後の『船橋屋』の方向性と、その中で社員が果たすべき重要な役割に気づきます。
「多くの企業は自社の特徴ばかりを語ります。しかし、お客様がなぜいま我々の商品を買わなくてはいけないのか?この問いに即座に答えられる企業は、そんなには多くないと思います。これに即答できるということは、つまり差別化ができているということになります。また、その特徴によってどのような利益を得ることができるのかをクリアにしていることが重要になります。さらにそれを社員一人ひとりが自分の言葉で語ることができる組織が理想だと気づきました。"社員が誇りと自信を持ってお客様に商品を提供する、一人ひとりが光り輝き、その光が集まり社会を照らす。"この"一燈照隅"が、いま『船橋屋』が掲げるビジョンです。各々の社員が主役となり、会社も応援する。結果、自分の言葉でお客様に語ることができるようになれば、経営が向上し社員も幸せに働ける会社にできると考えました。」

意味と価値の共有、共感力の形成が自信の向上につながる

こうした渡辺社長自身の意識改革もあり、2007年には組織活性化プロジェクトが発足しました。
「様々な取り組みで『船橋屋』は大きく変わりました。例えば、社内報は入社1~2年目の若手の自由な発想と個性を活かすためにプロジェクトごと任せました。その内容には手描きのイラストなどを盛り込み、隅々まで読みたくなるような分かりやすさと親しみやすさのあるものが、1ヶ月に1回発行されています。また中期経営計画書は数字や文字だけという堅苦しいものではなく、誰もが理解しやすいようにマンガ仕立てにするなど、会社としての理想を社員全員へ共通の価値やビジョンとして認知できる仕組みに変えていきました。若手が社内の情報や経営の計画を伝え、上司から指導やアドバイスをもらい、時には上下関係を超えて冗談が飛び交う明るい職場になったと思います。この価値の共有と共感力の形成が社員の自信の向上につながっています。」

社員が考案した「ありがとう」を伝えるカード
社員が考案した「ありがとう」を伝えるカード。ちょっとしたお礼や書類のやり取りで活用することでコミュニケーションが深まっている

また興味深いのは『船橋屋』の執行役員は総選挙で決めていることです。
「社員のリアルな支持は選出された社員の自信にもつながる一方、支持が少ないことで己の姿勢を振り返るきっかけにもなっています。様々な人材育成のプロセスを通じて『船橋屋』で仕事をすることの意味や価値、一人ひとりの承認の場を増やすことで、社員全体の自信向上につなげています。こうした改革は現場だけではなく、会社の文化となり、会社そのものが魅力的になります。数年前までは新卒の入社希望者が250人ほどでしたが、2015年は全国から1万7000人も集まるようになりました。」

渡辺社長の誕生日に社員から送られたメッセージボード|企業の伝統と社員の成長でより強く光る一燈照隅
風情あるお店で味わうくず餅は至福のひと時

人の健康に貢献する企業 "くず餅乳酸菌"の発見

組織の活力向上は新しい事業の原動力となり、好循環が生まれています。
「実はくず餅を発酵させる際にできる上澄み液に数種の乳酸菌があり、この江戸時代から受け継がれてきた菌が人の腸に理想的だということが分かりました。現在は新しく発見した"くず餅乳酸菌"を医薬品やサプリメントとして販売することも考えています。『船橋屋』は和菓子屋という枠を飛び越えて、健康提案企業としての一面をスタートさせたいと考えています。この新しい事業がお客様や社会のために役に立つということは社員の自信にもつながります。会社の成長と社員の成長、より強く光る"一燈照隅"につながることを私自身も楽しみにしています。」

風情あるお店で味わうくず餅は至福のひと時
風情あるお店で味わうくず餅は至福のひと時
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