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日本国際協力センター様
「利用する側だけでなくサポートする側のためにもなる制度の実現を目指して」

日本国際協力センター様
「利用する側だけでなくサポートする側のためにもなる制度の実現を目指して」|事例

一般財団法人 日本国際協力センター 様
一般財団法人 日本国際協力センター 様
|日本国際協力センター様「利用する側だけでなくサポートする側のためにもなる制度の実現を目指して」|事例_3
従業員数
:305人(2018年4月)※非常勤・期限付職員含む
主要業務
:留学生受入支援、国際交流など
キーワード
:制度構築、制度の利用促進、女性の就業継続
|日本国際協力センター様「利用する側だけでなくサポートする側のためにもなる制度の実現を目指して」|事例_3
齊藤牧 前人事課長に話を伺いました
齊藤牧 前人事課長に
話を伺いました

留学生の受入や国際交流を手掛ける日本国際協力センター。かつては、仕事と家庭・育児の両立が難しく、結婚や出産といったライフイベントを機に離職する女性職員が少なくありませんでした。しかし今では、育児休業や時短勤務などの制度を利用しながら仕事を続ける職員が格段に増え、男女を問わず、若手から管理職まで、幅広く職員の意識に変化が表れているようです。自らもワーキングマザーで、3年前から同法人の人事制度改革を進めてきた齊藤牧 前人事課長に取り組みを伺いました。

「キャリア構築とライフプランを両立させてあげたい」
問題意識から始まった取り組み

Q. “女性活躍推進”の課題について教えてください。
A. 日本国際協力センター(以下、JICE:ジャイス)は、外務省や国際協力機構(JICA)から留学生受入事業や国際交流事業を受託して実施する国際協力機関です。交流や日本への留学を通じて、共に学びあい、世界に知日家、親日家の輪を広げています。現在、現地事務所は14箇所、JICEの職員の1割が赴任や長期出張などの海外勤務に就いています(2018年9月現在)。

国際協力機関の職員が海外で勤務するのは当たり前のことと思われるかもしれませんね。でも、積極的に海外に出ていくようになったのは2000年前後からです。2000年前後から事業の成果を厳しく問われるようになって、現地での募集選考やフォローアップを手厚くやっていく必要がでてきました。手厚くやろうとすると、たまに向こうに行くのでは不十分で、現地に一定期間、駐在する必要があります。そのような背景があって、20代から30代前半の職員を海外にどんどん出して現地での経験を積ませています。
A. ここに難しい問題があって、20代後半から30代前半は一番キャリアが形成されやすい時期でもあり、また結婚・出産のライフイベントが最も多い時期でもあります。プロジェクトによっては海外勤務から数年外れられない場合があるので、いつ海外勤務を入れて、いつ結婚して、いつ出産するのかがものすごく難しいのです。

かつては、結婚を控えているときに海外勤務の辞令がでて結婚を延期する人や、育児と仕事を両立させている生活が描けずに復職後すぐに退職してしまう人、子どもを日本において海外赴任や出張することの精神的負担からキャリアを断念する人もいました。仕事は続けたいけど、家庭や子どもを思うと続けられない...。そのような姿を見てきて、JICEで働く人がキャリア構築とライフプランを両立させられるような環境を作るべきではと思っていましたね。
海外事務所で勤務する女性職員(右)。以前はキャリア構築とライフプランの両立が問題だった
海外事務所で勤務する女性職員(右)。以前はキャリア構築とライフプランの両立が問題だった

妊娠から介護までの制度をトータルに整備し見える化

Q. そう思っていたときに人事課に異動になり人事制度改革を始めたと伺いましたが、何から取り組んだのでしょうか?
A. まず取り組んだのは規程の整備です。私自身が妊娠・出産を経験したときに感じたことですが、会社の規程が少々わかりづらく、説明もなかった。さらに、育児休業規程や産前産後の規程が一つ一つ分かれていて、出産前はこれを読んで、出産後はこれを読んで、という状態でした。
別々の規程をわざわざ読むのは面倒ですよね。その煩雑さが制度の理解を妨げているのではないかと思いました。そこで、それまでの規程を作り変えて、妊娠・出産・育児に関する規程というのを作りました。それ1つを読めば、妊娠した段階から出産・復帰後までどのような制度があるのかが全てわかるようにしました。

さらに「妊娠された方へ」「出産された方へ」というチラシを作って、妊娠している間に取れる措置や復帰後の制度など、どのような支援制度があるのかをわかりやすく見える化しました。規程の整備とチラシ作りを同時に行って、「職員の妊娠・出産をJICEで働く人の当然のライフイベントだと考えています」という会社の姿勢をアピールしたんです。
Q. その時に工夫したことはありますか?
A. 妊娠・出産は、ある特定の年代の女性の問題だと思われがちですよね。そうすると、その特定の人たちだけが得をするように見られてしまう。そこで、全員が関係するであろう「介護」に関する制度の整備も一緒に行いました。
介護に関する制度はかなり充実させましたね。介護休業を最大2年間にするとか、遠方に親御さんがいて土日を介護に使ったら翌日の月曜日はお休みにしてあげるとか、実際に働いている人たちから意見を聞いて、こういう制度があったらいいなというものを形にしました。また「介護をされる方へ」というチラシを作って、妊娠・出産のチラシと一緒に発表しました。
チラシを作って制度を見える化した
チラシを作って制度を見える化した

良いも悪いも含めた情報提供で、自分の判断軸を作ってもらう

Q. 発表した後の反応はどうでしたか?反発などはあったのでしょうか?
A. 表立っての反発はありませんでしたね。国際協力をしようという機関ですので、そもそも優しい人が多いのかもしれません。ただ、ベテラン職員や特に管理職の方に配慮しなければと感じていました。先に述べたような制度が整っていない中で自力でキャリアを構築・継続していらっしゃった方々ですから、仕事をすることに対する価値観や意識といったものが、キャリア構築とライフプランの両立を支援する人事諸制度の価値観とは少し違うはずだと思ったのです。
Q. それに対してどのような取り組みをなさったのでしょうか?
A. 管理職に対して何度か研修を行いました。その時に強調したのが、組織はさまざまな事情を抱えた人たちが集まって成り立っているということです。妊娠・出産する人たちだけでなく、障がいを持っている人、病気を治療している人、介護をしている人たちもいて組織ができています。なんの事情もなく働ける人たちだけが集まっている組織はうまくいって当たり前で、さまざまな事情を抱える人たちがいる中でチームを作って成果をだすのが管理職ですよね、ということを研修の場や定期的なアナウンスで何度も伝えました。その甲斐あってか、今までマタハラなどで人事に訴えがきたことは1件もありません。管理職の方にご理解いただいて、職員が当然のこととして制度を利用できる土壌を作れたのかなと思っています。
Q. 管理職以外の方に対しては、何か取り組まれましたか?
A. 若手向けの育児と介護勉強会を実施しました。「介護の勉強会をなぜ若手に?」と思われるかもしれませんが、「この一連の人事制度の整備は、若いあなたたちにとっても他人事じゃないのよ」と伝えたかったのです。介護を経験した何人かの先輩に来てもらって、介護と仕事の両立に関する苦労話などをしてもらいました。語り手の一番若い人が36歳くらいで、「そんなに先の話じゃない」「育児と介護が同時にくるかもしれない」という心構えをもってもらえましたね。
ランチをとりながらの介護勉強会。勉強会を通じて、若手にも当事者意識をもたせる
ランチをとりながらの介護勉強会。勉強会を通じて、若手にも当事者意識をもたせる
Q. たしかに、最近では育児と仕事の両立だけなく、ダブルケア(育児と介護)と仕事の両立が言われるようになってきていますね。では、女性向けの取り組みについてお伺いします。制度を充実させた組織では、配慮される側の「モヤモヤ感」が問題になるときもありますが、その点はいかがでしょうか?
A. たしかに、調査書という形で社内でヒアリングしていると、「このままでいいのかな」という声が女性から挙がってくることがあります。そのような時は、キャリアのロールモデルとなる先輩と話してもらっています。先輩には、「今自分は鬱々としている」「ちょっと今は不満だ」というマイナスの要素も含めて話してもらうんですよ。
Q. 介護の勉強会のときも苦労話をしてもらったと伺いましたが、マイナス面も包み隠さず知ってもらうことを重視なさっているのでしょうか?
A. そうですね。私自身、子育ても仕事もやっていると、子育てをとるか仕事をとるかを判断せざるを得ない場面に日常的に直面しています。その都度、何を優先させるのかを自分で決めてバランスをとっていかないといけません。そういった判断をする際に、自分の中で適切な判断軸があれば判断しやすいと思っています。適切な軸を作るためには、良いも悪いも含めて偏りのない情報が必要で、だからこそ、苦労話やマイナス面も話してもらいますし、JICEがサポートできることをわかりやすい形で積極的に情報提供することを心がけています。

今後の課題はサポートする側が報われる環境づくり

Q. これまでの取り組みの効果はいかがでしょうか?
A. 制度を利用する人が爆発的に増えました。3年前に人事に来たときは、たまたまかもしれませんが、育休を取っている人が1人もいませんでした。今、育休を取っている人は6人います。また時間短縮や通勤緩和などの制度を利用している人は、人事に来た頃は2~3人でしたが、今は約20人です。昨年からは男性の育児休業の取得が増え、制度が浸透してきたなと実感しています。制度的には法律を大きく超えてはいないのですが、それをどうアピールするかが大事だったのかなと思いますね。
Q. まずは制度を理解してもらおうと取り組まれて、3年間で大きな効果が出ていらっしゃるのですね。今後はどのようなことをお考えなのでしょうか?
A. これから進めようと思っているのが、今は特別の配慮が必要ではないスタッフに報いるための制度構築です。産休・育休を取ったり介護で休みを取ったりするときは、やはり周りのサポートが必要不可欠ですよね。サポートする側が報われるような制度があれば、サポートされる側が申し訳ない気持ちばかりを抱えなくていいし、これからライフイベントを迎える人たちも安心できると思っています。キャリアを構築・継続しながらもライフプランをより充実させられる環境を作り続けていきたいですね。

ただ職員のライフプランの充実はJICEだけですべては解決できないので、配偶者の会社の理解が重要だと感じています。育児も介護も、どれだけ制度を利用したとしても、1人で抱え込むワンオペになると追い詰められてしまいます。JICEだけが制度を整えても限界があるので、社会全体で変わっていかなければいけないと思っています。
今年4月に「えるぼし」最高位を取得した。人事課はキャリア構築とライフプランの両方を充実させられる環境づくりをこれからも続けていく
2018年4月に「えるぼし」最高位を取得した。人事課はキャリア構築とライフプランの両方を充実させられる環境づくりをこれからも続けていく

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