ICTによる教育の変化|コラム|人材育成・教育研修

2016.10.06

年々盛り上がりを見せるICT教育。教育現場でのICT浸透を目指す全日本教育工学研究協議会全国大会は40回を超え開催されています。本コラムでは「ITの進化による教育の変化」というテーマで、昨今の教育現場におけるIT活用についてお伝えいたします。

やっと来た未来!?

まずはこちらの絵をご覧ください。

これらの絵は、1972年に「パーソナル・コンピューター」の概念を提唱したアラン・ケイによって書かれた "A Personal Computer for Children of All Ages" というレポートに出てくる、彼が理想とするコンピューターを描いたものです。

彼は、このレポートでこの新しいテクノロジーメディアを「能動的なより良い『本』」と呼び、半ば妄想的ではありますが、その機能などについて述べています。例えば、子どもたちはDynaBook(ダイナブック)を使い、ディスプレイ上で宇宙船を動かす宇宙戦争というゲームをしたり、このゲームから太陽や重力、座標系について学んだり、ネットワークにつなげて図書館から書籍を読んだりと、コンピューターを用いて遊びながら学ぶ姿が書かれています。
そして、このレポートが発表されてから40年経った現在、レポートの中で描かれた子どもたちの振る舞いはようやく現実のものとなり、日本でも、およそ5年程前からICT(Information Communication Technology)を活用した教育の取り組みが始まりました。

社会の変化に伴う、教育の変化 ―21世紀を生きる子どもたちに求められる力―

グローバル化など子どもを取り巻く環境が大きく変化する中、日本では「教育の情報化ビジョン」を掲げ、「学び」の場における情報通信技術の活用などに取り組んでいます。このビジョンの中で、「21世紀を生きる子どもたちに求められる力」として「生きる力」と「情報活用能力」が挙げられており、その育成のためには、子どもたち一人ひとりの多様性を尊重し、強みを生かし潜在能力を発揮させる個に応じた教育、そして、コミュニケーションを通じて協働して新たな価値を生み出すことが重要と述べられています。教育現場では、これまでの一斉学習はもちろんのこと、個別学習(一人ひとりの能力や特性に応じた学び)や協働学習(お互いが教え合い学び合う協働的な学び)が実践されており、情報通信技術を活用することでこれらはより促進されると考えられています。
ICTを用いた教育の効果については、まだ研究段階で賛否両論ありますが、独立行政法人メディア教育開発センターによる「教育の情報化の推進に資する研究」や、佐賀県武雄市の「ICTを活用した教育」などで、理解度や習熟度、成績が向上するという結果も出てきています。

ICT教育の取り組み

それでは、実際、どのような取り組みがなされているのでしょうか。具体的な事例をご紹介いたします。

(1)自分の動きをチェック!変わる体育の授業 ― 葛飾区立本田小学校、第6学年、体育科 ―

「教育の情報化ビジョン」ICTを活用した指導方法 マット運動 p.32~33より引用
http://jouhouka.mext.go.jp/school/pdf/ict_teaching_report.pdf

まずご紹介するのは、体育の授業です。
自らの動作を撮影、記録し、確認する。それを基に先生からアドバイスを受けて、次の目標をつくり、動作につなげる。
また、二人一組やグループをつくることで、撮影した映像に対して、それぞれの気付きを助言し合いながら、動作の習得を促します。まさにタブレットPCを用いた協働学習が見られます。

(2)電子黒板が写す!古典を原本から学ぶ ― 上越教育大学附属中学校、第1学年、国語科 ―

「教育の情報化ビジョン」ICTを活用した指導方法「古典『竹取物語』」p.40~41より引用
http://jouhouka.mext.go.jp/school/pdf/ict_teaching_report.pdf

次は国語、その中でも古典での取り組みです。
クイズ番組のようなデジタル教材と、『竹取物語絵巻』を取り込んだワークシートがこの授業の特徴です。ここではタブレットPCだけでなく電子黒板も活用されています。 電子黒板を用いた一斉学習と、個人ごとにタブレットPCから表示されるワークシートに解釈を書き込む個人学習、そしてグループをつくり解釈をディスカッションする協働学習と、まさに「教育の情報化ビジョン」で国が目指す授業が展開されています。

(3)まさにこれからの時代に必要!?プログラミング教育の実例 ― 佐賀県武雄市立山内西小学校、第1学年、課外授業 ―

武雄市「ICTを活用した教育(2014年度)」第一次検証報告書(2015、p.17~p18)より引用
https://www.city.takeo.lg.jp/kyouiku/docs/20150609kyouiku01.pdf

3つ目に、プログラミング教育の実例をご紹介いたします。
プログラミング教育は楽天の三木谷社長から声が上がるなど、産業界からも教育の必要性が高まっている内容の一つです。
こちらの図はいち早くタブレットPCを導入したことで知られる佐賀県武雄市の山内西小学校で取り組まれているプログラミング授業の実際の教材です。
この授業は、武雄市、DeNA(株)、東洋大学の3者が協定を結び行われており、小学1年生に対して「キャラクターをシナリオに沿って動かす」ことを目標に授業が展開されています。
今回のプログラミング教育では、キーボードをタイプして作っていくものではなく、ブロックを組み合わせるようなタイプのビジュアルプログラミングが使われています。

(4)海外ではもはやスタンダード?カーンアカデミー

これまで日本におけるICTを用いた取り組みをご紹介しましたが、最後に海外の事例をご紹介します。
「カーンアカデミー」というNPOをご存知ですか?「世界はひとつの教室 『学び×テクノロジー』が起こすイノベーション」という書籍の著者、サルマン・カーンが設立したカーンアカデミーは、学習内容を動画コンテンツとして2006年から提供し、36言語以上、毎日10万人以上の方に利用されています。また、提供するコンテンツ数は3,000本を超え、テーマも算数の足し算引き算から、ラファエロの作品に関する芸術の歴史、トマ・ピケティの資本論などの経済まで幅広くカバーしています。コンテンツを10分程度の短い動画とし、学ぶ人が何回も繰り返し学べるようになっているのが特徴です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。皆さまが受けてこられた授業と比べると、大きく様変わりしているのではないでしょうか。
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時代の変化によって、求められる能力は変わり、教育の方法も変化しています。 教師からの知識詰め込み型による従来の教育から、「個人で学ぶ」「チームで学ぶ」といったインタラクティブなスタイルへと学習方法が変化しています。子ども自身が「主体性をもって、自分が学ぶこと・学びたいことは何かを考え、どのように学ぶか」を選択するような、より自律的な人間へと育つことが求められていると言えます。このような授業スタイルの変化を享受した子どもたちが社会に羽ばたく日も近いでしょう。

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