経営戦略と連動した人事戦略とは?|コラム|人材育成・教育研修

2016.10.06

当社では人材開発の責任者の育成を支援する「人材開発エキスパート養成コース」という研修を提供しています。今回はこの「人材開発の責任者」、「CLO」をキーワードにその歴史や役割をお伝えします。

「CLO」をご存知ですか?

当社の公開型定額制ビジネス研修サービス「Biz CAMPUS Basic」で提供する特別企画の中で、半年間に及ぶ、参加者にとって負荷の高い研修にもかかわらず、毎回すぐに満席となる研修があります。

「人材開発エキスパート養成コース」という研修で人材開発の責任者の育成を支援することを目的としています。

突然ですが、CEO、CHO、CFO、CTO、CIO、CLO...これらが何の略称かお分かりですか?

そうです。日本語では「最高××責任者」と訳される役職です。

ご存知の通り、「CEO」は「Chief Executive Officer;最高経営責任者」、「CHO」は「Chief Human Resource Officer;最高人事責任者」です。
他にも、最近雑誌やニュースなどでも取り上げられなじみが出てきた、CFO(Chief Financial Officer;最高財務責任者)やCTO(Chief Technical Officer;最高技術責任者)、CIO(Chief Information Officer;最高情報責任者)などがあります。

では、「CLO」という役職をご存知ですか。

この「CLO」は、「Chief Learning Officer」の略称で、日本ではあまりなじみのない役職かもしれません。その役割はCHO(Chief Human Officer;最高人事責任者)や人事部長が担っている場合が多くみられ、日本語では「最高人材育成責任者」や「最高教育責任者」「最高学習責任者」と訳されます。

つまり、冒頭でご紹介した「人材開発の責任者」のことを指します。
この馴染みのない役職が、アメリカでは、ヒューレット・パッカード(以下、hp)やゴールドマン・サックス、ナイキ、アメリカン・エキスプレスなど名だたる企業で設けられています。

補足:CLOは「Chief Legal Officer」、日本語で「最高法務責任者」としても使用されます。今回のレポートでは「Chief Learning Officer(最高人材育成責任者)」として使用します。

CLOの始まりとその役割

CLOという役職が初めて登場したのは1990年、ジャック・ウェルチ(当時)率いるゼネラル・エレクトリック社(GE)に、スティーブ・カーが人材開発部の責任者として雇われた時のことです。 きっかけは、スティーブ・カーが自身の役職を「Chief Education Officer(最高教育責任者)」すなわち「CEO」を名乗ることをジャック・ウェルチに伝えたことです。この時、ジャック・ウェルチはスティーブ・カーに対し

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「GEにCEOは私一人だよ、CLOと名乗ったらどうだい?」

Steve Kerr and His Years with Jack Welch at GE, Larry Greiner Professor of Management and Organization,Marshall Business School University of Southern California,2003 より訳出
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と笑いながら命名したと言われています。

CLOは「社員を教育する責任者」「企業の人材開発の責任者」ですが、なぜ「人材開発」の責任者を設ける必要があるのでしょうか。一般的なCHOや人事部門責任者が行うこととどのような違いがあるのでしょうか。

その違いについて、新生銀行のCLOを勤めたペダーセン氏は、次のように述べています。

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「人材開発だけではなく組織開発まで深く踏み込む。経営トップと直接意見を交わしながら、3~5年先の会社の在るべき姿を描き、それに合致した人材作りや組織作りを目指す。その代わり、採用活動や就業規則の策定、労使交渉などは人事部門に委ねる」

「新生銀行が『学ぶ組織』を標榜、邦銀初の『CLO』職を設置」より引用
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20060425/236270/
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ポイントは「経営トップとつながり、会社の未来を見据えた人材・組織の開発に特化していること」です。
では、なぜ、hpやゴールドマン・サックス、ナイキ、アメリカン・エキスプレスなどの企業が「人材開発に特化した責任者(組織)」を採用したのでしょうか。
それは、これまでの人事部では十分に行えなかった「戦略的HRM(Strategic Human Resource Management;戦略的人材マネジメント) 」の必要性が高まってきたからです。

戦略的HRMとは?

戦略的HRMの説明に入る前に、そもそも人事部の役割とは何かを考えたいと思います。
皆さまは「人事部門の仕事、役割は?」と聞かれたら何を思い出されるでしょうか。
人事考課などの人の査定・評価、労働時間などの労務管理、研修・・・などを思い出されるのではないのでしょうか。

「人材育成のMBA」や、冒頭のGEのCLOスティーブ・カーと共にGEの組織改革を行ったD.ウルリッチは、人事部の役割を「(1)戦略的人材マネジメント」「(2)大転換や変革のマネジメント」「(3)企業インフラのマネジメント」「(4)従業員の貢献のマネジメント」の4つに大別しました(下図参照)。

出典 Human Resource Champions: The Next Agenda for Adding Value and Delivering Results, 1997, David Ulrichを参考に作成

このマトリクスから考えると、人事部門の仕事の多くは人事情報管理、勤怠管理、給与計算といった管理業務のほか、③企業インフラのマネジメントや④従業員の貢献のマネジメントの上図下側の「日常/業務に焦点」が該当します。

このように「管理」ばかりに目が行きがちな人事部門の役割ですが、マトリクスが示すように、会社の「未来/戦略」に焦点を当てた仕事を行うことも人事部門の大事な役割です。
ここで、戦略的HRMの説明に話を戻すと、「戦略的HRMとは、企業の経営戦略と連動した人事諸施策を遂行すること」を言います。企業戦略と連動するわけですから、「管理業務」や「日常」に目が行っていては企業戦略の描く「未来」を見ることができません。未来を見る、つまり、会社の将来を支える人材を考えることができなければ企業の存続も危ぶまれます。
だからこそ、「未来/戦略」の業務を実施する役割を人事部門から独立させる必要が出てきたのです。そして、この独立した部門の責任者のことを「CLO」と呼び始めたのです。

つまり、hpやナイキなどがCLOを制度として採用したのは、会社の「未来/戦略」を見据え、これまでどおりの「人事部門内」での人材開発を行うのではなく、「部門から独立させ」、会社のこれからを支える人材の育成に注力するという思いがあったからだと考えられます。

人材開発という仕事を考える

いかがでしたでしょうか。今回は、人材開発責任者、CLOについてお伝えしました。 人材開発、人材育成は「企業の未来に必要な人材」「企業として提供する価値の源泉となる人」を生み出す仕事だと、改めて感じられたのではないでしょうか。

多くの企業の人事部門の方が人材育成だけでなく、労務管理や給与計算など間接部門の仕事の多く(あるいは、その全て)を任されている状況がある中で、CLOのように他の業務から独立して育成だけに注力する・・・というわけにはいかないかと思いますが、当社のコンサルタントがお伺いした際には、会社のこれからや、それを支える人材、その方の育成など「未来」について一緒にお話できれば幸いです。

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