コンプライアンス教育の在り方|コラム|人材育成・教育研修

2017.01.17

コンプライアンス教育は得てして捉えどころがなく、企業が苦労しているテーマの一つです。今回は、特に若年層のコンプライアンス教育について、その在り方やツールをご紹介します。

漠然としたコンプライアンス教育

「コンプライアンス教育」と聞いて、どのような教育をイメージするでしょうか。一口に「コンプライアンス教育」といっても幅が広くあります。

<例>
  • ・弁護士による法令についての説明
  • ・社会保険労務士による近年の就業規則や残業の在り方についての説明
  • ・産業医によるハラスメントについての最新動向や留意点の解説
  • ・情報システム部門による情報セキュリティの取り扱いについての説明
  • ・人事部による行動規範の説明

コンプライアンスとは、それだけ漠然としたところがあり、つかみどころがないため、教育においてはどこからどのように進めるべきか悩むケースが多くあります。

一般的にコンプライアンスといった場合は、「法令遵守」、「社内ルール遵守」、「社会的良識の遵守」の3つのカテゴリーが挙げられます。また、そのレベル感も、内定者、新入社員、若手社員、中堅社員、管理職、経営幹部といった階層によって視点も変わってきます。例えば、新入社員に抽象的なことを伝えても、新入社員は実際に何をどう振る舞えばいいのかピンときません。むしろ、ペーパーベースの機密情報はシュレッダーにかける、SNSには自社の写真をアップさせないなどの各社の社内ルールの周知が適切です。一方で、役員管理職クラスになると、事業をかじ取りする上でのモラル、財務諸表の信ぴょう性の担保など、上位概念が優先することがあります。これについては、「知りながら害をなすな」というドラッカーの有名な表現があります。

従って、コンプライアンス教育を考える場合、まずは、対象者を誰とし、テーマを何に絞るのかを決めることが必要です。また、コンプライアンス教育が終わった後に、受講者にどのような意識や行動を求めるのか、事前に具体的なイメージを持って取り組むことも重要です。例えば、購買担当者には下請法を理解してもらい法律違反にならない発注をしてもらう、営業担当者には、売上計上で不正が起きないように適切な処理を遵守させる、などがあります。このように、コンプライアンス教育はとかく総論で取り上げられることが多く、また、意識の向上など抽象的な概念が語られることが多いため、対象者、テーマ、教育後の具体的な行動を想定することが肝要です。今回は、若年層に対するコンプライアンス教育の在り方をご紹介します。

若年層のコンプライアンス教育の在り方

従来は、若手社員、例えば新入社員にコンプライアンス教育を行う場合、人事部門などが行う研修と、職場で行うOJTが中心でした。企業の中には、コンプライアンス読本を配付したり、カードを配付したりと、ツールを用いるケースも多く見られました。しかし、全てを研修の場で伝えきれない、職場のOJTは形骸化しつつある、コンプライアンス読本は配付しても読まれないなど、現場の悩みは尽きません。先輩社員や上司も、細かい部分でのコンプライアンス教育、例えば、「自社のレピュテーションを傷つけないSNSの使い方」などには手が回らないのが実態です。

そこで、若年層に対して、どのようなツールが親和性があり適切かを検討すると、一つの解答としてはモバイルが考えられます。例えば、ある都内の大学では講座のアンケートは全てスマートフォンからの入力で実施されています。モバイルであれば、隙間時間を使って学ぶことができます(マイクロラーニング)。あるいは、仕事中にちょっと迷った時にスマートフォンで検索・確認できます(ワークプレイスラーニング)。配信側も、コンテンツはタイムリーに作成、修正が可能であり、どの程度学んでいるかもシステム的にモニタリングできます。

もちろん、コンプライアンスの全てがルールなどとして明文化できるわけではありません。また、現場では、クレームなどを含め、事前に想定されない事象が起こり、その対応について個々人の判断や行動に委ねられるケースも多いです。そこで必要なのが、社員がいざというときに迷わず判断できる「価値基準」を浸透させることです。例えば、ある企業では、コンプライアンスカードに「その行動は、家族が見ても後ろめたさはありませんか」のような文言を刻み、迷ったときはこれに基づく判断をするよう意識させることができます。

エンゲージメントとコンプライアンス教育

コンプライアンス教育というと、「遵守」 「厳守」 「ルール強化」といった決まり事の徹底の面がどうしてもクローズアップされます。しかし、これだけで本質的な解決はできません。「遵守」 「厳守」 「ルール強化」などによるアプローチを、「北風アプローチ」とすると、一方で「太陽アプローチ」も必要です。この2つを併せ持たないと、社員が疲弊をしてしまいます。性悪説アプローチはコストと業務負荷がかかり、きりがありません。

では、「太陽アプローチ」とは何か。これは社員一人ひとりが自社に対して誇りを持ち、仕事にエンゲージし、会社の代表として振る舞える環境を整備することです。

「この会社で働けることを誇りに感じる」
「尊敬する先輩、上司、同僚がいる」
「育ってほしい後輩、部下がいる」
「大事にしたいお客さまがいる」
「自社のレピュテーションを落としてはいけない」
「したがって、正しく誠実に行動するし、モラルに反することはしない」

このように社員一人ひとりが思える会社づくりを目指すべきです。この分野において、人事部門は手腕の見せどころではないでしょうか。

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