“経験”を“成長”に変えるには、まずは仕事の任せ方から|コラム|人材育成・教育研修

2017.04.10

人材育成なくして企業の成長なし。企業にとって、人材が大切なことは言うまでもありません。 今回は、会社の成長につながる社員の成長、その社員の成長に欠かせない「経験」の場を与える際に注意すべきポイントをご紹介します。

経験こそ、学びの資源

「人は何から学ぶでしょうか?」と聞かれたら、皆さんは何と答えますか。デキる人から学ぶ、本から学ぶ、失敗から学ぶ・・・など、回答は人それぞれです。経営コンサルタントであるマイケル・ロンバルドとロバート・アイチンガーの研究によると、ビジネスにおいて人は70%を仕事上の経験から学び、20%を先輩・上司からの助言やフィードバック、10%を研修などのトレーニングから学ぶと言われています。これは「7・2・1の法則」とも呼ばれ、企業研修などでもよく引用されています。経験を積むと自信が付き、できることがどんどん増えていきますから、「仕事上の経験が学びの7割を占めている」ことは、皆さんの感覚とも合致しているのではないでしょうか。

「人の成長は7割が経験から」などと言われると、「先輩からのアドバイスや研修は重要じゃないのか?」と思ってしまうかもしれませんが、そうではありません。学びにとっての一番の資源である「経験」に、人との関わりや研修による気付きなどが加わることで、経験の質が高まり、個人の能力開発につながっていくのです。

人材育成は「経験」「助言」「トレーニング」の三位一体で

「経験」について考える前に、先輩・上司からの助言やトレーニングについても簡単に触れたいと思います。

以前のコラム(2017年2月28日付「せっかく立てた人材育成計画-『研修』の取り入れ方で達成までの道のりは変わる」)で、人材育成の方法は一般的に、「OJT」「OFF-JT」「自己啓発」の3つがあり、「OFF-JT」の中でも研修に注目している企業が多いとお伝えしました。この3つを「7・2・1の法則」に当てはめてみると、「OJT」は意図的に経験させるという点では7割の「仕事上の経験」、他者からの薫陶やフィードバックという点では2割の「先輩・上司からの助言」に当たります。残りの1割が「OFF-JT」や「自己啓発」といった「研修などのトレーニング」です。

大事なのはこれらの割合(7・2・1)ではなく、「仕事上の経験」「助言やフィードバック」「研修などのトレーニング」の全てが社員の成長には必要という点です。前述のロンバルドとアイチンガーはパフォーマンス向上とキャリア形成について述べた書籍※1の中で、割合(7・2・1)に触れた後「フィードバックはお膳立てをするだけで、それ単体では機能しない。一人でただ経験するだけというのも、質の悪い学びにしかならない。研修や読書もそれら単体では機能しない」「手短に言えば、成長に関する方策はオーケストラのように組み合わせることで最もよく機能する。単体では、それらは楽器・道具にすぎない」と述べています。

仕事のコツや改善点を先輩に教えてもらったり、情報整理された研修で効率的に知識を身に付けて学びにつなげる。もちろん、学ばせ方や社員一人ひとりの学ぶ姿勢が問われますが、経験を成長に変えるような人材育成を実現するには、「経験」「助言」「トレーニング」の三位一体で考えることが大切です。

成長を促す仕事をアサインし、任せ方にも工夫を

では、本題である「経験」について考えていきましょう。仕事上の経験が学びの7割を占めていることからも、経験させて学ばせることが人材育成の肝であることは間違いありません。そのため、できるだけいろいろな仕事を経験させてあげたいと思うのは上司の親心。しかし、ついつい仕事を回すことを優先して、経験者にアサインしてしまうというのはよくあることです。これは、短期的に成果を上げるという視点ではプラスかもしれませんが、経験者ばかりにアサインしていると、「できる人だけができる」という状況に陥ってしまい、長期的に人を育てることにはつながりません。

だからと言って、やみくもに経験の場を与えても人は成長しません。重要なのは、どんな業務を任せたいのかをはっきりさせることと、仕事をアサインしようとしている対象者の理解度を知ることです。対象者のレベルを把握し、適切な業務を割り振ること、つまり成長を促すための仕事をアサインすることを常に頭に入れておかなければいけません。あえてハードルの高い課題を経験させる「ストレッチ・アサインメント」を取り入れることも時には必要です。

また、アサインの仕方も大切な要素です。"やらされ感"がある仕事と、"自らやる"と決めた仕事では取り組み方に大きな違いがでてきます。「なぜあなたなのか」「この仕事をすることのメリットは何か」といった意義付けをし、さらに仕事を進める上でつまずくであろうポイントをあらかじめインプットする。そして再度意義付けをして自己決定を促していく。当社ではこの仕事の任せ方を「任せ方2.0」と呼んでいて、「任せ方2.0」を実践している上司の下で働く部下は成長が早いという調査結果も出ています。

どんな仕事をどのように任せるか、アサインの仕方で人の学びと成長は大きく変わってきます。OJTとOFF-JT、自己啓発をどう組み合わせるかも人材育成に欠かせないポイントですが、思うように育ってくれないなと思ったら、経験のさせ方、つまり仕事の任せ方に一工夫を加えてみてはいかがでしょうか。

参考文献
※1 CAREER ARCHITECT DEVELOPMENT PLANNER(1996)
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