行動変容につなげる効果的な企業内研修の設計|コラム|人材育成・教育研修

2017.04.17

「学ばせたことが職場で活用されていない」「気づきはあるが、行動変容につながっていない」・・・人材育成のご担当者からよく聞くお悩みです。今回のコラムでは、成果につなげるための「行動変容」の理論的背景を確認しつつ、行動変容を促す研修の在り方について考えます。

経営の視点に立った「人材育成の方針」の定め方

企業の人材育成をご支援している中で、次のような悩みをよく聞きます。

  • ・学ばせたことが職場で活用されていない
  • ・研修を受講させても受け身で「やらされ感」がある人たちがいる
  • ・受講生の上司の理解が得らず、研修で学ばせたことが職場で実践できない
  • ・研修は、常にやりっぱなしで投資対効果が測定できない

なぜ、このような研修になってしまうのでしょうか。

人材育成ロードマップや研修計画、研修企画をしている時には、前述のような状況に陥らないよう検討をしているはずですが、結果はいつもと同じになっているようです。いろいろな調査機関の調査結果からも「気付きはあるが、行動変容につながっていない」という項目が圧倒的に賛同を得ています。

これでは、人材育成に投資する意味を感じることができません。

行動変容とは何か

「研修を受けたら、気付きを得て行動変容につなげてほしい」と人材育成担当者は考えます。この時の行動変容とは何を意味するのでしょうか。研修の目的から考えると、行動変容とは「現在の状況への適合やビジョン実現に向けて、不適切な行動習慣を適切な行動習慣に変えることである」と定義できます。

行動変容の理論はB.F.スキナーによって確立された行動分析学を土台にエドワード・デシ、アルバート・バンデューラによって研究が進められ、「現在の行動は過去に学習したものであり、求める行動も学習させれば習得できる」という考えが確立されました。

さらに各種理論を統合して「行動変容ステージ理論」が提唱されました。この理論は、対象者の関心の程度や実行の状況に応じて5つのステージに分類できるというものです。そして、そのステージによって効果的な変容プロセスがあることが分りました。対象者は、このステージを行ったり来たりしながら、最終ステージである「維持期」に至り、習慣化され、変容された行動が定着することになります。

【行動変容ステージ理論】
第1ステージ : 前熟考期

「本人の課題が明確ではなく、新しい行動への取り組みに無関心」

第2ステージ : 熟考期

「課題をおぼろげながら認識し、どのような課題に向かうかを考える」

第3ステージ : 準備期

「課題を明確にし、その課題解決に向けて準備やトライアルを行う」

第4ステージ : 実行期

「設定した課題に対して、6カ月程度実際に新しい行動に変えて挑戦する」

第5ステージ : 維持期

「実行期で実践した新しい行動を習慣化させ、定着を意識して行動する」

このステージを順次昇っていくためには、適切な刺激を行い、本人が自ら課題に気付き、その課題を解決する新しい行動に取り組む決意をさせることが必要となります。この刺激が、研修時の講義などによる知識インプットやワークショップなどの知識アウトプットトレーニングです。

行動変容を促す研修の企画

効果的な研修を企画することができれば、受講者への刺激となり、行動変容のステージを上昇することができます。しかし、単発の刺激では、行動変容に向けての意志は継続することができません。ここに研修企画のポイントがあります。たとえ1回の研修であったとしても、単発の刺激にしないことが必要なのです。

効果的な研修を企画する際に研修プロセス上で重要比率は、以下の通りと言われています。

研修前 : 研修 : 研修後 = 4 : 2 : 4

この比率で研修を企画することが、行動変容ステージを上昇させることにつながります。

研修前

ここで研修の受講者本人に、自身の課題に気付かせる施策が必要です。本人が気付くことができれば、第1ステージから第2ステージに昇ることができるのです。例えば、知識テストを受けて定量的に課題を把握させたり、上司から「会社の期待を伝え、現状とのギャップを考えてもらう」など定性的に課題を把握することも有効です。
さらに自らの課題を明確にし、課題解決に取り組むために研修に参加することを明文化てし、上司や同僚など関係者に宣言することも重要です。
研修内容を研修後の日常業務内で実践させるために、受講者の上司を上手く巻き込み、実践させる環境を作つくっておくとともに、効果測定のために研修のゴールを定めておきます。

研修

研修では、課題解決の新しい知識や行動を知り、ノウハウをアウトプットするトレーニングを徹底的に行うことで、研修後に現場に戻ってから実践するイメージを持ってもらいます。このイメージを持たせることは、日常業務内での実践の後押しとなります。
さらに研修内で、具体的かつ継続させることを念頭に置いた実行計画を立案・宣言させることで、本人に研修後の実践を決意させます。

研修後

研修前につくった環境の中で、研修時に宣言・決意した実行計画を実施していきます。ここもただ実施するだけではなく、上司の力を借りて定期的に内省を行い、自らの経験を概念化できるサイクルで実践していきます。成功体験を実感させ、経験をストックさせることでさらに効果的な行動に挑戦する動機を高めることにつながります。
そして、その動機が高まり続けることで新しい行動が定着し、習慣化していきます。ここで研修前に設定した研修ゴールに到着しているかどうか、定量的な調査を行うことで効果測定もしっかりできます。効果測定によってさらに成功体験を積み重ねることも可能です。

研修を企画する際には上記の内容をぜひご検討ください。

最後に

研修後に行動変容させるためには、研修だけを考えるのではなく、その前後をじっくり考えなければなりません。そして、新しい行動を継続させていくために知識のインプットやアウトプット、行動の継続実践をサポートするツールを検討する必要があります。

これまでのように、「何でも最後は対面でコミュニケーションすることで対応する」のでは、人材育成担当者の人数と時間が、研修効果を高めることの制約条件となってしまいます。

このような状況を出現させないために、例えばデジタルツールの有用性なども検討し、導入していっていただければと思います。

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