ワーク・ライフ・バランスと生産性向上の関係とは|コラム|人材育成・教育研修

2017.08.28

大手企業を中心に、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)を謳う企業が増えています。長時間労働や残業を前提としないことは、従業員にとってはありがたいことのようですが、同時に生産性向上という命題を突きつけられることになります。今回のコラムではワーク・ライフ・バランスと生産性について考えてみたいと思います。

ワーク・ライフ・バランスの意義とは?

「月間平均68件」...これは、2017年に「ワーク・ライフ・バランス」に関連して発表された論文等の学術文献の数です※1。多寡の判断がつきにくいところですが、「アベノミクス」関連の文献の数が月間平均14件程度ですから、やはり多いと言えるのではないでしょうか。近年、普通に生活していてもワーク・ライフ・バランスという言葉を頻繁に見聞きするようになりました。政府が進める働き方改革の影響も相まって、ワーク・ライフ・バランス関連のニュースを見ない日がないと言っても過言ではないでしょう。
ワーク・ライフ・バランスとは「仕事はほどほどにしてプライベートを楽しむこと」ではなく、「仕事(Work)と生活(Life)を共存させながら、仕事の責任を果たすと同時に、プライベートも充実させ個人が望む人生を送ること」と定義されます。内閣府では「仕事と生活の調和」という表現をしています。もちろん、「仕事はほどほどに」という働き方も否定されるものではありませんが、プライベートを重視するあまり業務で約束した成果をおざなりにするようなことがまかり通れば、企業として立ち行かなくなります。

ワーク・ライフ・バランスと生産性向上の関係とは

これまで企業におけるワーク・ライフ・バランスの取り組みとして多く見られたのは、「残業を抑制して強制的に退社時間を定める」というものです。「アイデアが出るまでやろう」という会議のように、気を付けていないとダラダラとやってしまいがちな業務については、時間に限りがあることでいわゆる「お尻に火がつく」状態になって時間内に終わるというケースもあると思います。しかしその他の多くの業務は、単に早く帰ることを推奨するだけでは、やるべきことを最後までやらずに帰ってしまったり、焦りからくるミスやモチベーションの低下が品質や生産性の低下をもたらし、ついには業績の悪化につながりかねません。ワーク・ライフ・バランスの意義は生産性を向上させつつ適切に残業を減らすことであり、働き方の見直しとあわせて考えるべきものと言えます。

※1 2017年7月末現在、Google scholarで「ワーク・ライフ・バランス」に言及した記事を検索した結果478件が該当。同様の手法で「アベノミクス」を検索すると95件(月間平均14件)。

ワーク・ライフ・バランスのための生産性向上

社員のワーク・ライフ・バランスを保ちながら生産性を向上させるための方法として、大きく2つが考えられます。

① 社員以外のリソースの活用

単純作業や繰り返しの業務など、必ずしも自社の社員がやる必要がないと思われる業務については、社員以外のリソースを活用するという解決策が考えられます。具体的には特定の作業を専門に行うスタッフの活用、機械化、アウトソーシングなどです。 すでに取り組んでいらっしゃることもあるかもしれませんが、特に機械化については、AI(人工知能)の発達などにより、機械に任せることができる「単純作業」の範囲はどんどん広がってきています。長時間労働が常態化している職場は各メンバーの業務を洗い出し、「この業務は本当にこの社員がやるべきか?」と問い直してみることが必要です。またシステムの導入などは業務プロセスの見直しを伴うため、「そもそも不要だった業務」に気づくきっかけにもなります。

② 働く環境や職場の意識、制度の見直し

業務における生産性の向上は、社員が働く環境や制度を見直すことで叶えられることがあります。例えば、下記のようなケースが考えられます。

(ア) 柔軟な勤務形態:
テレワーク導入とそれに伴う人事制度の見直しなどです。家族の事情などで現行の制度のままではどうしても働き続けることが難しく、休職せざるを得ない状況になってしまう社員がいたとしたら、それだけ生産性は低下してしまいます。これまでワーク・ライフ・バランスの「ライフ」は個人の趣味など「仕事に比較すると優先順位の低いもの」として捉えられていましたが、今後は育児や介護など「決しておざなりにできない」ライフを抱えながらワークする人が増えることが想定されます。このように、「100%仕事に時間を投入できないが優秀な人材」を確保する観点からも、柔軟な勤務形態の受け容れが求められます。
(イ) 効率的な働き方:
会議の見直しなどです。多くの関係者を集める会議は、そもそも開催の必要性を問うとともに、必要と判断された会議でも明確なゴール設定やファシリテーションスキルの向上など、生産性を高める努力が必要です。対面ならではのメリットもありますが、会議体の設置の前に「関係者全員の参加が必要か?」「事前の準備や情報共有などで会議時間を減らせないか?」と問い直してみてはいかがでしょうか。
(ウ) 能力開発・継続学習:
個々人の生産性を高めるための訓練・能力開発を行うことも解決策として考えられます。生産性の継続的な向上は、すでにうまく行っていることをさらにうまく行うべく、現場の社員自らが継続して学習することによってもたらされます。その社員の継続学習を助けるために、経験からだけでは得られない気づきや体系化された知識を獲得する機会を会社として提供することが求められます。

ワーク・ライフ・バランスは業績向上に寄与する? 生産性向上のためのワーク・ライフ・バランス

これまで見てきたように、ワーク・ライフ・バランスを保ちながら生産性を向上させるために、ただ「早く帰る」ことを奨励するのではなく、「賢く働く」手立てを社員に与える・伝えることも必要です。機械化など投資が必要なものもありますが、少しの制度変更や社員の意識次第で変えられる部分も多くあります。もちろん、これらの賢い働き方は、一部の「意識の高い」社員が個人的に取り組んでも組織としての成果にはつながらず、ワーク・ライフ・バランス向上のために「みんなで生産性を高めよう」という意識改革が「職場ぐるみ」で必要です。
当社では、女性活躍推進を支援するための教育プログラムを提供していますが、このプログラムの目指すところはまさに「職場ぐるみで働き方を見直す」ことにあります。育児中の女性社員(ワーキングマザー)に活躍してもらうために、管理職・女性社員本人・職場のメンバー、そして人事部という4つの層に対して、科学的なエビデンスに基づいた知見をお伝えし、職場全体で認識を改め働き方を見直していただきます。

なお、ワーキングマザーが活躍できる職場には「仕事を抱えているメンバーの手助けをする」「目標を達成しようという雰囲気がある」「お互いに競争意識をもっている」という特徴があることが分かっています ※2。ワーク・ライフ・バランスが保たれ、ワーキングマザーが働きやすい職場とは、すなわち「高い生産性を生み出す条件のそろった職場」と言えるのではないでしょうか。7月に発表された経済財政白書でもワーク・ライフ・バランスと生産性の相関が報告されています※3。御社でも「生産性向上のため」にワーク・ライフ・バランスに取り組んでみてはいかがでしょうか。

※2 トーマツ イノベーション×中原淳「女性の働くを科学する:本調査」(2017)

※3「平成29年度 年次経済財政報告」(内閣府)

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