管理職の役割 ―増大する業務負荷の中で、管理職が担うべき役割とは何か|コラム|人材育成・教育研修

2017.12.20

管理職の業務は年々増え、業務内容も複雑化しています。また課長職の99%以上はプレイヤーを兼務しているという調査結果もあります。今回のコラムでは、このような状況下で管理職が必ず押さえなければならない役割とは何か考えたいと思います。

管理職の役割 ―増大する業務負荷の中で、管理職が担うべき役割とは何か|人材育成コラム_3

多岐にわたる管理職の役割

「管理職の皆さまにはどのような役割がありますか?」管理職研修でこのような問いかけをすると様々な答えが返ってきます。業務の進捗管理、目標の設定、生産性の向上、部下のモチベーションの向上、部下の育成、人事評価、労務管理、情報セキュリティの徹底、コンプライアンス徹底など、多くの項目が列挙されます。2012年に経団連がまとめた「ミドルマネジャーをめぐる現状課題と求められる対応」では、「ミドルマネジャーに求められる基本的な役割」として以下の4つの事項が示されています。※1

  • ・情報関係(社内外の情報収集及び分析、必要情報の経営トップへの伝達、ほか計6項目)
  • ・業務遂行関係(日常業務の処理や課題解決、ほか計3項目)
  • ・対人関係(長所・短所を踏まえた指導・育成、仕事に対する動機づけ、ほか計5項目)
  • ・コンプライアンス関係(個人情報の管理、労働時間管理、ほか計5項目)

今回は、管理職の中でも課長職を想定し、その役割を考えたいと思います。課長職は色々な意味で役割を果たすのが難しいポジションです。部長職が管理職を直属の部下としているのに対し、課長職の部下は新入社員からベテラン部下までと幅広く、部下の年齢や能力には大きな幅があります。また、雇用形態も正社員のみならず、契約社員、派遣社員、パート・アルバイト等多様な場合もあります。現場の細かい問題に対処しながらも、上位の戦略を汲んで中長期的な取り組みもおこないます。このように企業の核となるポジションでは、どのような役割を担うべきなのでしょうか。

※1 日本経済団体連合会 2012年「ミドルマネジャーをめぐる現状課題と求められる対応」

管理職の役割とは

管理職の役割 ―増大する業務負荷の中で、管理職が担うべき役割とは何か|人材育成コラム_4

管理職に期待される役割は、企業規模、経営戦略、そして組織構造等により異なります。オーナー経営の中小企業であれば、社長の数だけ役割期待の種類があると言っても過言ではありません。しかし、どのような場合でも共通して求められる役割はないのでしょうか。

経営視点で考えた場合、管理職に共通の役割は「自組織において継続的に成果を出すこと」です。

ここでまず重要なのは「成果の定義」ですが、これは事業戦略によって異なります。例えば営業部門であれば売上、粗利、市場シェアなどが成果として考えられますが、売上といっても絶対金額なのか、成長率なのか、新規顧客の割合なのかなど変わってくるのです。そこで管理職の第一の役割は、全社戦略・事業戦略を十分理解した上で、自組織の成果を明確に定義することです。これにより、初めて率いるチームのベクトルを統一することができるのです。

つぎに成果を「継続的に出す」ために、管理職は何に取り組むべきでしょうか。概観すると業務面と組織面の大別できます。業務面とは統括する組織の業務遂行を管理し、業績に貢献することです。具体的には以下の取り組みが挙げられます。

  • ・業務の構想
  • ・業務の進捗管理
  • ・PDCA
  • ・業務の見直し

「業務の構想」

自組織の成果を定義し、具体的な目標を立てた後、管理職が取り組むべきことは「業務の構想」です。成果を創出するために自部門においてどのような機能が必要か考え抜きます。その際、自部門の業務構想が部分最適に陥らないように、会社全体の動きに目を配らなければなりません。そして各機能にはどのような知識スキルが必要か分析します。その上で、メンバーの知識スキルが活きる、すなわち長所を充てたアサインをおこないます。

「業務の進捗管理」「PDCA」

ここでのポイントは、管理職自身が仮に人事異動で抜けたとしても、職場で「PDCAが廻る仕組みをつくる」ことです。具体的には、会議体の設計、帳票の設計、KPIとそのレビュー方法の設計などが挙げられます。管理職だけでPDCAを廻していては組織全体での学習ができず、発展性に限界が生じます。また、管理職が抜けた途端にPDCAが廻らなくなってしまっては、継続性が損なわれてしまいます。

近年は環境変化が激しいことからOODAの重要性が唱えられています。OODAとは、米軍が開発した戦局判断の技術です。状況を観察(Observe)し、方向性をつけ(Orient)、次なるアクションを決定し(Decide)、実行に移す(Act)という一連の流れを表します。OODAはPDCAの代替法であるという向きもありますが、むしろPDCAと併せ持つことに意味があります。変化が激しい時代では、当初立てた計画に固執せず、その過程や手段論は変化に応じて変えていくべきです。管理職が固執すべきは計画ではなく、「最終成果」であるべきです。

「業務の見直し」

「業務の見直し」については、維持と変革の複眼で見る必要があるでしょう。維持とは、業務の標準化をおこない軌道に乗せ、ミス・トラブルなく日常運営することです。管理職が現場に近い立場であるほど、現状維持に力が働きます。しかし、内外部の環境は変化します。標準化は翌日から陳腐化が始まります。したがって、管理職は時に常にゼロベースで業務の在り方をレビューし、再度業務を構想し直し、新たな付加価値を生み出す必要があります。

組織面における役割のポイント

組織面とは、メンバーとの信頼関係を築き、育成・成長を図ることです。具体的には、以下の取り組みが挙げられます。

  • ・理念や戦略の浸透
  • ・仕事のアサイン
  • ・メンバーの動機付けと育成
  • ・チームビルディング

「理念や戦略の浸透」

人には自分の取り組みに意義や意味を見出したいという欲求心理があります。また、いかに有能なメンバーが集まったとしても、各人がバラバラな方向に走っていては組織としての成果を出すことはできません。したがって、管理職は経営層から提示された理念、ビジョン、戦略を現場の言葉に翻訳し、自らの言葉でわかりやすく伝え、正しい行動を促す必要があります。自分たちの存在意義は何か、何を目指しているのか、達成した暁にはどのようなメリットを享受できるのか、日頃からメンバーの関心事項を把握し、それを経営層が描いたビジョン等に結びつける知的活動をおこなう必要があります。

「仕事のアサイン」「メンバーの動機づけと育成」

ロンバルドとアイチンガーの研究によれば、人はおよそ7割を経験から学ぶとしています。いわゆる 7:2:1 の理論です。したがって、仕事のアサインとメンバーの育成は統合して考えるといいと思います。

アサインの原則は、業務で求められる知識スキルと本人の長所とのマッチングですが、メンバー本人の成長を狙ってあえて苦手な業務をアサインすることもあります。この場合、心理的安全を確保することが肝要です。すなわち、もし本人が全力を尽くしたにも関わらず失敗してしまった場合、それを咎めるのではなく、またそれを理由に仕事を外したりするのではなく、管理職が適切なフォローをすることです。意図的に挑戦をさせるからには相応のセーフティネットは必要不可欠です。セーフティネットがあるからこそ、メンバーは安心して全力を尽くすことが出来ます。

動機づけについては、管理職が出来ることには限界があります。なぜなら、人の動機は多様であり、かつ時間とともに変わりうるものだからです。「マネジメントの大事な役割は部下のモチベーションを下げないことである」との至言も聞かれます。世の中には数多くのモチベーション理論がありますが、アサイン、動機付け、育成の3要素を統合しているものとして、ハックマンとオルダムの職務特性理論を紹介します。この理論では以下の5つの特性を満たす仕事を付与することがモチベーションにつながるとしています。

  • ・技能多様性:自分の持つ能力を活かせる仕事である
  • ・タスク完結性:仕事の始まりから終わりまで一貫して関わられる
  • ・タスク重要性:仕事そのものが重要視されている
  • ・自律性:自分の裁量が発揮できる
  • ・フィードバック:実施した仕事から手応えを得られる

「チームビルディング」

学習するチームを創ることも管理職の大切な役割です。人は相互に刺激を受けあって成長し、相乗効果を生み出します。そこで、管理職は職場においてメンバー同士の触媒機能を演じる必要があります。具体的には、管理職自身の限界を認めメンバーの力を借りるスタンスをとります。職場の心理的安全を高めることでメンバー同士が率直に意見を言い合える風土を創ります。責任権限の線引きを明示します。やっていいことと悪いことを明確に示し、前者の行動であれば承認し、後者の行動をしたメンバーには責任をとらせます。全力を出した上での失敗は許容し、失敗から学ぶことをチームで実践します。一人一人のメンバーが貢献意識、当事者意識、責任感を持って、安心して仕事に全力を尽くせる土壌をつくります。

権限移譲は意思決定権ごとにおこなう

メンバーに主体性を持たせるために意見を聞くことは必要です。また管理職一人で考えることには限界もあります。しかし、最終的に意思決定をするのは管理職です。意思決定から逃げる管理職は、早晩、求心力を失います。

もちろん業務一式をメンバーに権限移譲するのであれば話は別です。その際の留意点は移譲した権限を奪わないことです。例えば、もしあなたが他のメンバーに権限移譲した内容の相談を持ち掛けられたらどうすべきでしょうか。その時は、「その件については権限を委譲したAさんが決めたやり方に従ってほしい」と伝えてあげるべきでしょう。

今回は、管理職、その中でも課長クラス(ミドルマネジャー)を想定してその役割を検討してきました。各社によって管理職に期待する役割は異なりますが、今回のコラムが一つの参考になれば幸いです。当社では管理職向けの研修をきめ細やかな要素に分解したうえで数多く行っています。当社の管理職養成ノウハウがお役に立てればと思います。

参考文献
  • 学校法人産業能率大学 2010年「上場企業の課長を取り巻く状況に関する調査」
  • サイモン・シネック著 2012年「WHYから始めよ!―インスパイア型リーダーはここが違う」日本経済新聞出版社
  • 中原淳著 2010年「職場学習論―仕事の学びを科学する」東京大学出版会
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