人事評価制度の改定は慎重に。人事評価制度改定の落とし穴|コラム|人材育成・教育研修

事業環境の変化に合わせた人事評価制度の改定は、企業にとって必要な施策の一つです。しかし、中には改定をして良い結果を得られない企業があります。良い結果を得る企業とそうでな企業にはどんな違いがあるのでしょうか。今回は人事評価制度改定の落とし穴について考えていきます。

人事評価制度の改定は慎重に。人事評価制度改定の落とし穴|人材育成コラム_3

なぜ企業は人事評価制度改定に取り組むのか?

企業における人材マネジメントの一環で、人事評価制度の改定に取り組む企業は少なくありません。労務行政研究所の調査※1では、過去5年間に半数近くの企業が何らかの人事評価制度の改定に取り組んだという結果が出ています。

人事評価制度の改定は慎重に。人事評価制度改定の落とし穴 なぜ企業は人事評価制度改定に取り組むのか?|人材育成コラム_4

ではなぜ企業は人事評価制度の改定に手を付けるのでしょうか。
実際に人事評価に取り組もうとする企業からは、以下のような声をよく聞きます。

  • ・事業環境の変化に人事評価の内容が追いついていない
  • ・報酬にメリハリをつけたい
  • ・評価者によって人事評価結果にバラつきがある
  • ・人事評価結果に対する従業員の納得感が低い
  • ・労力をかけて評価しても、その後の活動に活かされない
  • ・人事評価結果と企業側が評価したい人とのミスマッチが起きている

などです。

しかし、上記のような悩みを解消しようと人事評価制度の改定を進めても思ったような結果が得られない企業もあります。
なぜこのようなことが起こるのでしょうか。その原因を考える上ためには、人事評価制度がどのような要素によって構成されているのかを理解する必要があります。

※1 一般財団法人労務行政研究所 2017年4月14日発行「『労政時報』第3928号」

人事評価制度を構成する要素とは?

では、ここからは人事評価制度を構成する要素を詳しく見ていきたいとおもいます。まず、人事評価制度は大別すると「人事評価制度の構築・改訂」のフェーズと、「人事評価制度の運用」のフェーズがあります。それぞれのフェーズ毎に更に項目を細分化すると、以下のような構成要素に分解することができます。

  • 1. 人事評価制度の構築・改訂
    • (1) 人事評価項目・基準設定
    • (2) 評価実施者の決定
  • 2. 人事評価制度の運用
    • (1) 従業員の評価の実施
    • (2) 人事評価結果の活用
    • (3) 人事評価結果の評価者および本人へのフィードバック

各項目の詳細

1. 人事評価制度の構築・改訂

  • (1) 人事評価項目・基準の設定
    • ① 職種別・階層別の評価項目を設定する場合が多い。職種・階層の数をまずは設定し、各職種・階層ごとにどのような項目で評価するのかを決める
    • ② 決定された項目に対して、何段階で評価するのか、各段階はどのような基準で評価するのかを決める
    • ③ 評価項目に応じた重み付けを決める(各評価項目の配点を決める)
  • (2) 評価実施者の決定
    • 評価結果が確定するまでの評価者を決定する。例えば、自己評価を元に、一次評価者は直属の上司(課長級)、二次評価をもう一つ上の上司(部長級)が実施し、最終的に経営幹部が実施する会議で評価を決定するというような手順となる

2. 人事評価制度の運用

  • (1) 従業員の評価の実施
    • 「1. (2)」で決定された評価の手順に従い定められた評価者が評価を実施する。一般的には年二回程度実施している企業が多い(上半期評価、通年評価など)
  • (2) 人事評価結果の活用
    • 人事評価結果をどのように活用するかを決める。給与や賞与の基礎資料として活用される場合が多い。それ以外にも、昇格・降格への反映、人事異動への活用、人材育成への活用など結果の活用方法を決める
  • (3) 人事評価結果の本人へのフィードバック
    • 人事評価結果を本人へフィードバックする。直属の上司が実施することが多いが、企業によっては、直属の上司だけでなく、さらにその上席の役職者(部長など)や人事部門の担当者が同席する場合もある

人事評価制度改定の落とし穴とは?

構成要素を把握いただいたところで、人事評価制度の改定によって思ったような結果を得られない主な要因を見ていきましょう。考えられるのは、以下の2点です。

  • 1. 改定すべき人事評価制度の要素の選択が適切でない
  • 2. 人事評価制度の改定による影響を見誤る

1. 改定すべき人事評価制度の要素の選択が適切でない

人事評価制度の課題は人事評価項目・基準などの制度そのものの問題というよりは、評価の実施や評価結果のフィードバックなどの運用部分が効果的に実施されていないケースが圧倒的です。

例えば、人事評価結果に対する従業員の納得感が低い場合に、人事評価項目・基準の改定をしてもあまり効果が上がりません。納得感の低さの原因は、評価者によって評価のバラつきが大きいことや、人事評価結果が従業員本人に十分にフィードバックされず、各従業員の評価結果に対する理解が不十分といったことなどであるからです。 この場合、評価のバラつきをどう解消するために評価の仕方を改善する、人事評価結果のフィードバックを適切に実施するための方策を取るなどに取り組まなければ従業員の納得感の低さは解消されません。

2. 人事評価制度の改定による影響を見誤る

人事評価制度の改定による影響はポジティブなものだけではありません。改定に取り組む場合はネガティブな影響も出ることも考慮しなければなりません。

人事制度改定に伴うネガティブな影響には以下のようなものが挙げられます。

  • (1) 人事評価制度改定そのものに費やされる業務負荷、費用の発生
    • 例:想定以上に経営層も含めたキーパーソンとの調整に時間がかかる、改定内容の従業員への説明が想定以上に必要となるなど
  • (2) 人事評価制度改定の恩恵を受けない従業員の士気低下
    • 例:評価基準の改定によって、今までの評価よりも下がってしまう従業員の存在、
      評価が今よりも上がることを期待していた、評価が変わらない従業員の存在
  • (3) 人事評価制度の改定によって発生する制度の運用コスト増
    • 例:目標管理制度を取り入れることによって発生する、半期ごとの目標設定のため
      の業務負荷の増大、達成状況の把握のための実績データの作成工数の増大など

ここで挙げたような落とし穴に陥らないためには、人事評価制度の改定の必要性をしっかりと吟味する必要があります。
人事評価制度の改定によって得られる正の効果よりも、改定に伴う負の側面が大きく出る可能性があれば評価制度の改定を止めることも選択肢の一つです。

改定を考えるきっかけとなる人事評価制度の問題は、多くの場合制度そのものよりも制度の運用に問題がある場合がほとんどです。
なかでも、評価者側の人事評価に対する理解が不十分なために起こる不適切な評価や、評価結果のフィードバックの不完全な実施などは数多くの企業で見られる事象です。

人事評価制度の改定は、多くの従業員の給与に影響を与えるなど、従業員の生活をも影響を与える劇薬となる側面を持っています。安易な人事評価制度の改定は負の結果を招くリスクも高めます。まずは、自社の評価制度がねらい通りに運用されているのか、運用で改善できることはないのかといった視点で自社の制度を見直してみてはいかがでしょうか。

評価者側の改善を図ることで解決できる問題も多いので、まずは評価者側のレベルアップを図ることも一つかもしれません。
当社でも評価者のレベルアップを実現するための研修テーマとして、評価への取り組み方や評価結果のフィードバック、面談の仕方など評価者向けのものを色々とご用意しています。是非ご活用いただければと思います。

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