会計・財務の知識を習得することで得られるものとは?|コラム|人材育成・教育研修

2018.02.07

社員が会計・財務の知識を得ることは「会社視点」での行動につながります。「係数感覚」を身につけ会計・財務の知識を習得することは重要ですが、それ以上に価値があるのは数字をベースとした思考力が身につくという点です。今回は社員が会計・財務を学ぶことの意義を考えていきたいと思います。

会計・財務とは何か

経理部門以外の社員にも会計・財務知識が必要という認識が広がってきました。書店には決算書の入門書が数多く並んでいます。一方で、会計・財務は自分には縁遠いものとしている社員もまだ多く、事実、管理職でもPL、BSの読み方をご存じない方も少なくありません。今回は、社員が押さえるべき会計・財務の基礎知識と、それを起点とした数字的な感性について考えていきたいと思います。

会計・財務の知識を習得することで得られるものとは?

まずは、会計、簿記、決算書及び財務のそれぞれの用語を確認してみましょう。厳密な定義ではなくそれぞれの位置づけをわかりやすくすると以下のように整理することができます。

会計

会計とは、「決算書を作成するための基本理論」「企業会計原則をはじめとする基本ルール」と言えます。少しかみ砕いて説明すると「企業のお金が増えた理由や減った理由を記録することや記録するためのルール」といったイメージでしょうか。

簿記

「決算書を作成するための具体的な技術」代表的なものとしては、記帳、仕訳、決算仕訳などが挙げられます。

決算書

一言でいうと「会社の成績表」です。「財務諸表」とも呼ばれます。決算書の種類としては、損益計算書(PL)、貸借対照表(BS)、そして上場企業等の場合はキャッシュフロー計算書の3つをさします。

財務

「資金調達、資金運用及び資本構成等を管理すること」を言います。もう少しかみ砕いてお伝えすると「事業活動に必要なお金を集めたり、どのように活用するかを考えて管理する活動」と言えます。

今回は特に決算書(PL、BS)の読み方を念頭に考えていきたいと思います。

決算書を読み解く力の必要性

なぜ、経理部門以外の社員も決算書を読める必要があるのでしょうか。現場社員にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。キーワードは「会社視点」と「係数感覚」です。

「会社視点」

企業は、株主や銀行からの資金調達をし、利益の蓄積を元手に事業を創り、顧客に付加価値を提供することで売上利益を上げ、それを再投資するというサイクルを廻しています。決算書を読めるようになることで、数字という言語を通じて会社の全体像を理解し、今後について考察することができます。

例えばPLを読むことで、売上を上げるために何にどの位コストをかけたかがわかります。BSを読むことで会社がどこから資金を調達し、資金を何で運用しているか理解することができます。他社の決算書と比較分析することで自社の強み・弱みを把握し、改善のきっかけを得ることもできます。

また、勘定科目間の関連性を理解することで会社の大きな動きを理解することができます。例えばBSで棚卸資産及び短期借入金が増加し、PLで売上高が低下していた場合、「売上が下がった結果在庫が増え、運転資金が不足したため短期借入を起こした」という因果を含んだストーリーが考えられます。その上で今後、自社がどのような動きをすべきなのかが考えられるようになります。

「係数感覚」

「人が少ないので一人採用してほしい」という現場の声があったとします。しかし、社員一人採用するとどの位の経費がかかるでしょうか。決算書になじんでいれば、その費用対効果を考えることができるようになります。

例えば、年収500万円の中途社員を一人採用するとします。紹介会社を使った場合は年収の3割の手数料(150万円)を支払います。入社後、給与賞与が発生しますが、これに各種保険料(法定福利)、通勤費、貸与PC、貸与携帯等を加味すると年収のおよそ1.5倍(750万円)になるでしょう。加えて福利厚生費や会議費等も常に一人分追加です。すなわちトータルで1,000万円近くの固定費増加になる可能性があります。固定費の増加を伴うものとなると、採用はこれに見合うものか、業務改善により現在の人員で対応できる方策はないか立ち止まって検討することになるでしょう。

また、営業担当者であれば、自分が販売している製品1個当たりの原価や粗利率を知ることにより、値引き販売やボリュームディスカウントの是非を検討できるようになるでしょう。遠方の顧客に行くことはどのくらいの移動コストがかかり、それに見合うだけの成果は得られるのか目的意識をもって行動するようになるでしょう。キャッシュフローの概念と重要性を知れば、受注契約後の回収までしっかり対応するとともに、与信への取り組みも力が入ると思います。損益分岐点を理解していれば、売上目標達成へのコミット度合いも違ってくるでしょう。

社員はどこまでの知識を習得すべきか

管理職やリーダーにとって決算書に関する基礎知識及びそこから磨かれる「会社視点」、「係数感覚」はマネジメントをする上で不可欠です。営業部門であれば売上利益のマネジメント、製造部門であれば原価管理やコストコントロール、建築やITであればプロジェクト収益管理に直接影響を及ぼします。

一方、一般社員であれば、決算書に関する知識がなくても目先の業務で困ることはないでしょう。実際、現場主体の一般社員にとって、普段なじみのない決算書を自発的に学ぶことは難しく、会社側から強制的にきっかけを与える必要があります。具体的には研修や社内勉強会等が考えられます。数字に苦手意識がある一般社員でも、PLやBSの構造をわかりやすく説明し適切な題材でケーススタディに取り組んでもらうと、想像以上に面白みを見出し学んでくれるものです。では、実際にどの程度の知識を習得させるべきでしょうか。

まず、PLに出てくる各段階の利益の意味は確実に知っておくべきです。

売上総利益
:製品サービスの実力
営業利益 
:本業の実力
経常利益 
:会社の実力

同様に、PLの主な費用科目の意味は現場実務のつながりとともに理解させておくべきでしょう。例えばIT業であれば人件費、外注費、地代家賃、通信費及び採用のための広告宣伝費、卸売業であれば商品仕入高、期首期末棚卸、人件費、販売手数料、旅費交通費、荷造運搬費等が考えられます。それぞれの費用は本人たちのどのような活動により増減するのか、実務と数字の関連性を中心に学んでもらうことが最良です。

財務の分析指標はどうでしょうか。多くの教科書を見ると、掲載されている分析指標の多さに圧倒されますが、10項目程度押さえておけば問題ないと思います。具体的には以下のとおりです。

収益性 
:売上高総利益率、営業利益率、経常利益率、売上に対する主要経費の比率
資金繰り
:売掛金回転期間、棚卸資産回転期間、買掛金回転期間
安全性 
:自己資本比率、流動比率、固定長期適合率
生産性 
:一人当たり売上高

数字をベースにした思考力の強化

決算書を読むための知識の習得はきっかけに過ぎません。知識以上に重要なのは数字をベースにした思考力です。数字の推移に目を配り、その変動に気づき、変動の背景にある理由や原因に思考を巡らせることです。

そのためには、決算書に限らず、普段の職場会議等で目にする数字データを読み取り今後の方向性を考えることを習慣化することが大切です。例えば小売業であれば一坪当たりの売上や客単価の推移を踏まえて方策を検討する、製造業であれば一人当たりの付加価値やリードタイムをチェックし改善策を検討するイメージです。昼食の際も飲食店に入った時に「席が10席、メニューを見ると平均800円位、昼休み時間中は3回転するとして、おおよそ売上は24,000円位」と頭を動かしてみる。

このように数字を読むことをきっかけに数的思考力を磨いていただくと良いと思います。当社でも決算書の読み方、財務分析の仕方、データの読み方等をテーマとした研修をご提供しています。貴社の社員の「会社視点」と「係数感覚」の強化に役立てていただければ幸いです。

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