コーチングとは?ティーチングとの意味の違いとメリットを解説|コラム|人材育成・教育研修

コーチングは、ビジネスのみならず私たちの日常生活の中でも拡がりつつありますが、「正しいやり方」を理解し実践できなければ、その効果は期待できないものとなってしまいます。二回にわたりお送りするコーチングのコラム第一弾は、その基礎知識についてお伝えします。

コーチングとは?ティーチングとの意味の違いとメリットを解説|人材育成コラム_3

コーチングとは?

コーチングとは

コーチングとは、コーチ(指導者)が質問や傾聴を通じて、クライアントから“答え”を導き出すことで成長を促す、いわば「クライアントの自律をサポートするコミュニケーション技術」と言えます。

コーチングとは?ティーチングとの意味の違いとメリットを解説|コラム|人材育成・教育研修

その語源はクライアントを目的地へ送り届ける「馬車(コーチ、coach)」とされていることからも、コーチングとは「コーチ(指導者)がクライアントをサポートし、目的地(望む結果・状態)へ到達させる」というイメージを思い描くと分かりやすいかもしれません。 このような性質を持つことから、今や多くの企業で、管理職のマネジメントスキル向上や、個人の能力開発などを目的に、コーチングが取り入れられています。
今回のコラムでは、ビジネスにおけるマネジメントスキルとしてのコーチングについて、ご紹介したいと思います。

コーチとクライアントとの関係

まずはじめに、今回のコラムで取り上げるのは、マネジメントスキルとしてのコーチングについてですから、コーチはマネージャー(以下コーチ)であり、クライアントはメンバー(以下クライアント)とします。ここで重要なのは、コーチとクライアント双方が、それぞれのスタンスを理解することです。
冒頭でコーチングについて「コーチ(指導者)がクライアントをサポートし、目的地(望む結果・状態)へ到達させる、というイメージを思い描くと分かりやすいかもしれません」と述べました。これは単にクライアントがコーチに乗っかる、ということではありません。コーチは質問や傾聴を通じて、クライアントから“答え”を導き出す「サポート役」にすぎず、クライアントこそがコーチとのコミュニケーションを通じて、自分の中にある“答え”を見つけ、それに気付く「主役」です。まずは、コーチ=「サポート役」、クライアント=「主役」の認識を双方でしっかりもちましょう。

コーチングには双方向のコミュニケーションが欠かせません。つまり、コーチとクライアントの信頼関係なくしてコーチングは成り立ちません。コーチがどれほどコーチングのスキルを学び習得したとしても、クライアントからの信頼を得られなければ、思うような成果は期待できないでしょうし、その逆もしかり、ということを認識しておく必要があります。コーチはクライアントの性格や思考に加え、クライアントがコーチングの目的やゴールを理解しているかも、的確に把握できるよう努めたいものです。

コーチングのメリットとデメリット

次に、コーチングのメリットとデメリットについてご紹介します。コーチングの一番のメリットは、やはりクライアントの成長と言えるでしょう。クライアントは、コーチの働きかけによって、潜在的な部分も含め自分の中にある“答え”を見つけ出します。コーチからの質問によって自ら考え、行動すること、つまり、自律性を養うことが次第にできるようになっていくのです。また、副次的なメリットとして、コーチとクライアントの間に、コミュニケーションを軸とした信頼関係が醸成されることは言うまでもありません。
一方で、デメリットを挙げる際、それはコーチングの結果に対するデメリットではなく、「コーチングスキルの低いコーチが、コーチングを行うことのデメリット」について考えることが大切です。例えば、コーチにクライアントとの信頼関係構築についての重要性の理解が欠如していては、そのクライアントに対し的確な質問を投げかけたり、傾聴の姿勢を示すことは困難でしょう。結果、一方的にコーチ自身の考えをクライアントに押し付けてしまうという可能性も生じます。また、コーチングを行うクライアントの選定を誤り、まだ知識や経験が浅く、成熟度の低いクライアントを対象としてしまっては、適切な“答え”を導き出すことができず、クライアントを混乱に陥れてしまうリスクも考えられるのです。 コーチングを実施する際には、メリットとデメリットに触れ、コーチが「正しいやり方」を理解し、適切なアウトプットを行えるようにすることが欠かせません。

ティーチングとの違い

コーチングとティーチング

コーチングのデメリットとして、「まだ知識や経験が浅く、成熟の低いクライアントを対象としてしまっては、適切な“答え”を導き出すことが出来ない」と先述しました。では、「まだ知識や経験が浅く、成熟度の低いクライアント」には、どのように向き合えばよいのでしょうか。
コーチングは、“答え”を「教える」ではなく「導き出す」ことです。当然、成熟度の低いクライアントは、知識や経験の引き出しが浅いことから、クライアント自身が適切な“答え”を見つけ出すことに困難が生じます。そのようなクライアントには“答え”を導き出すコーチングではなく、「教える」ティーチングを手法に取ると良いでしょう。ティーチングとは、コーチングで言うコーチが、クライアントに知識や解決策を「教える」という手法です。ティーチングは、コーチからクライアントへの一方向コミュニケーションになることから、コーチングのメリットで述べたような、クライアントの自律性を養う、というメリットは得難くなります。もっとも、コーチとクライアントが共に「目的地に向かう」という点は、コーチングとティーチングの共通点と言えるかもしれません。

コーチングの対象の選定

では、実際にクライアントの成熟度とコーチング/ティーチングはどのように考えれば良いのでしょうか。ここではSL(Situational Leadership)理論をご紹介したいと思います。
SL(Situational Leadership)理論とは、 ハーシーとブランチャードが提唱したリーダーシップ条件適応理論のひとつで、部下の成熟度を4段階に分けて、それぞれの段階に合わせてリーダーシップのスタイルを対応させる、とするものです。部下の成熟度は、成熟度が低いものから以下の4段階に分けられます。

(1) 教示的
経験が浅く業務遂行能力が低い状態。具体的に指示し、事細かに監督する
(2) 説得的
ある程度成熟度が高まってきたら、上位の考えを説明し、疑問に答える
(3) 参加的
さらに成熟度が高まったら、部下が自分で考えをまとめて決められるように仕向ける
(4) 委任的
成熟度がかなり高い状態。仕事の遂行を任せる

(1)に近いほどティーチング主体に、(4)に近づくほどコーチング主体に、リーダーシップスタイルを変化させると効果的とされます。しかし、クライアントの成熟度が高い場合、クライアントは自身に成長の必要があることを認識していないケースや、コーチングを受ける必要性を感じていないケースもあります。コーチングには、コーチとクライアント双方のマインドセットが重要です。
誰を対象とすべきか熟考を要することも、押さえておきたいポイントです。
皆さんの部下(クライアント)を思い浮かべてみて下さい。いかがでしょう。誰にコーチングを実施し、誰にティーチングを行うべきか。イメージはわきましたか?

コーチングのステップ

コーチングのステップ

さて、コーチングの対象となるクライアントが決まったら、次は何をすれば良いのか。ここからはコーチングのステップについてご紹介をします。

  • (1) コーチングの準備
  • (2) つまづきポイントの確認
  • (3) コーチングのルール・計画立案
  • (4) コーチングの実施
  • (5) フィードバックの実施

(1) コーチングの準備

コーチングは「思い立ったが吉日」で、いきなり始められることではありません。コーチングの目的は、クライアントの成長を支援することです。コーチングの実施に向け、入念な準備を行いましょう。そもそも、コーチはコーチングの手法と、目的を明確に理解していますか?コーチングを終えたとき、クライアントにどのような状態になって欲しいか、明確なゴール設定はできていますか?具体的なコーチングの計画を立案するうえでは、対象(クライアント)の選定と同様に、明確な目的理解とゴール設定が欠かせません。また、クライアントが現在、どのようなスキルや知識を有していて、どのような課題を有しているのかを事前に把握しておく必要があります。コーチとクライアントが別部門である場合は、コーチはクライアントの上司との打ち合わせを行って下さい。

さらに、コーチングにおいては、コーチとクライアント双方がリラックスした状態で、対等にコミュニケーションを重ねられる「環境」の準備も重要です。例えば、冷暖房がなく、狭くて暗く、外部に声が漏れてしまいそうな部屋では気持ちまでネガティブになってしまいますし、安心して思っていることを打ち明けることが出来ません。双方が安心を感じ、快適に時間を過ごすことのできる空間の確保に努めましょう。飲み物や軽食が準備されているなどの工夫も効果的です。

(2) つまづきポイントの確認

コーチングの準備が整ったら、さっそく計画立案へ進みたいところですが、その前にコーチングがうまくいかなくなってしまう原因、「つまづきポイント」について押さえておきましょう。事前にこの「つまづきポイント」を押さえることで、コーチングの経験が浅いコーチにも「コーチングをするうえでこんな問題が起こりうる」という理解が進みますから、実際に問題が起きたとしても落ち着いて、それを想定内と捉えることができるようになります。
以下に、つまづきポイントの例を挙げてみましょう。

  • ・ 選定したクライアントが、そもそもコーチングの対象に適していなかった
  • ・ コーチがコーチングスキルを習得しておらず、収拾がつかなくなってしまう
  • ・ コーチとクライアントが上司と部下である場合、一方が苦手意識を抱いている場合がある
    (相性が合わない、そもそも信頼関係が構築されていないなど)
  • ・ コーチのフィードバックでクライアントが自信を喪失し、ネガティブになってしまう
  • ・ クライアントが第三者に知られたくない情報を、コーチが外部に漏らしてしまう
  • ・ 記録を残していなかったがために、言った言わないの水掛け論に発展してしまう
  • ・ コーチングの優先度を低く設定してしまい、時間の確保ができない
  • ・ コーチングのゴール設定に、コーチとクライアントの合意形成が行われていない
  • ・ クライアントに、コーチングに臨む姿勢が備わっていない

これらを見ると、つまづきポイントの多くが、コーチとクライアント双方のコーチングへの理解が不足していることから生じるものなのではないか、ということに気付かれるのではないでしょうか。
コーチングという言葉が市民権を得て、ビジネスのみならず私たちの日常生活の中でも拡がりつつある昨今ですが、「正しいやり方」を理解し実践できなければ、その効果は期待できないものとなってしまいます。コーチングについての正しい理解を携えて、次の計画立案のステップに進みましょう。

(3) コーチングのルール・計画立案

いよいよコーチングの実施に向けた計画作りの段階です。コーチは具体的な計画を作成する前にクライアントとセッションを行い、クライアントを選定した理由や背景、コーチングの概要や目的、実施期間を共有し、予め双方で合意したゴールの設定を行いましょう。コーチングにおいては、コーチとクライアントは対等の立場になくてはいけません。コーチが一方的にゴールを設定した場合、時としてクライアントの納得感が得られないというリスクも生じますので、念頭に置いておきたいポイントです。
ゴールが設定されたら、そこから逆算してどのようなプロセスを経て支援していくのかを、具体的且つ実現可能な状態で計画に落とし込んでいきましょう。あるべき姿や、理想論を落とし込んだところで、それは絵に描いた餅になってしまいますし、クライアントに負荷がかかりすぎないような計画になっているか、という点にも配慮が必要です。
そして、その計画をより効果的なものとするためにも、ルール作りが肝心です。クライアントはどのように振り返りを行うか、報連相はどのタイミングでどのように行うか、セッションの内容をどのように記録に残すか、守秘義務についてどう共有するかなど、計画と同時に、ルールの設定も行いましょう。

(4)コーチングの実施

計画の立案が終わると、いよいよコーチングの実施に移ります。(1) コーチングの準備、(2) つまづきポイントでもお伝えしたように、コーチングに上下関係はありません。コーチとクライアントが対等な立場でコミュニケーションを重ねていきます。そしてコーチングは、コーチが質問や傾聴を通じてクライアントから“答え”を導き出すことで、クライアントの成長支援を行うことが目的です。信頼関係なくしてコーチングは成立しないことを、コーチは肝に銘じて臨みましょう。
※本コラムでは、「コーチングの概要」についてご紹介させていただきます。具体的なコーチングの手法やスキル、テクニックについては次号「コーチングのスキルとトレーニング方法 ー部下の効果的なコーチングのためにー」に掲載予定です。ご期待ください。

(5) フィードバックの実施

コーチングの実施に伴い、実際にどのようなことが起こったか、そこから次へどうつなげていくかというフィードバックを実施します。フィードバックにあたっては、クライアントが事実(ファクトベース)に基づいて「客観的」に自身の振り返りを行うことが重要です。クライアントが自身の振り返りを行い、それを踏まえてコーチからフィードバックを受ける、という順番が一般的です。ここで、コーチは自身のフィードバックがクライアントの成長に繋がるんだという意識を強く持ち、現状と目標とのギャップを明確にし、かつ具体的なフィードバックができるよう臨んで下さい。

まとめ

コーチングとは、コーチが質問や傾聴を通じて、クライアントから“答え”を導き出すことで成長を促す、いわば「クライアントの自律をサポートするコミュニケーション技術」です。本コラムでは、コーチングを実施するうえで、コーチとクライアントの信頼関係構築が必要不可欠であること、コーチとクライアントは対等な立ち位置にあること、コーチはクライアントの成長を支援するためにも、コーチングの正しい知識を理解・実践する必要があることを概要に触れながらご紹介しました。
次回のコラム「コーチングのスキルとトレーニング方法 ー部下の効果的なコーチングのためにー」では、実際にコーチングを行う上でのスキル、フィードバックに必要なスキル、コーチングスキル向上のためのおすすめトレーニング方法をご紹介する予定です。是非ご期待ください。

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