指示の仕方を変えれば部下はみるみる変わる|コラム|人材育成・教育研修

2016.11.17

本コラムは東洋経済オンラインに掲載された当社コンサルタントによる3回連載の寄稿記事です。第2回は、具体的にどのように部下に仕事を任せればよいのかについて、仕事の任せ方の進化形、「任せ方2.0」をご紹介いたします。

部下をうまく動かす「任せ方2.0」とは?

前回は、部下が指示どおりに動かないのは「仕事の『目標咀嚼』がなされないまま、仕事を任せているから」という、弊社の調査結果をお伝えしました。目標咀嚼とは、わかりやすく言えば「『なぜ、その仕事を行わなければならないか』を分かりやすく説明する」という行動です。その仕事を行う目的や意義をきちんと説明できると、部下は自然と動くようになります。

部下をうまく動かすには?

では、具体的にはどのように部下に仕事を任せればよいのか? 今回は、弊社が調査結果から導き出した仕事の任せ方の進化形、「任せ方2.0」をご紹介させていただきます。

「任せ方2.0」とは?

部下が自然と動くようになる「任せ方2.0」の様子を見てみましょう。題材は、第1回でもご紹介した「全社のコストダウンプロジェクトへのアサイン」です。前回の任せ方と比較しながら見てください。

上司:Aさん、ちょっといい?

部下A:はい、大丈夫です。

上司:実は、来月から、部門横断のコストダウンプロジェクトが始まるんだ。で、そこにAさんに参加してほしいんだ。

部下A:え!? 私が......ですか?

上司:そう。全ての部門から1人出すことになったから、うちからはAさんを推薦しといたよ。詳しいことは、総務部長からの連絡で分かると思うけど、プロジェクトの目的だけは伝えておくね。

部下A:あ、はい。

上司:このプロジェクトは「コストを減らす」ことももちろんだけど、「仕事のやり方を見直す」ということが本当の目的なんだよね。最近、作業的に仕事をこなしている様子が見受けられるからね。実際、どこの部門でも初歩的なミスが連発しているし。

部下A:そうなんですね......。(メモを取る)

上司:そう。で、なんでAさんを推薦したかというと、うちの部門の業務についての理解を深める、いい機会だと思ったんだよね。仕事のやり方を見直すためには、個々の業務の目的やつながりなどを深く理解する必要があるからさ。Aさんは「業務を遂行する」というところは申し分ないから、次は「業務を改善する」「構築する」ってレベルに行ってほしいんだよね。

部下A:分かりました、ありがとうございます。

上司:ただ、そんなに簡単ではないよ。特に「人を動かす」という点には、本当に苦労すると思う。人間、今までのやり方を変えるのは嫌がるからね。

部下A:確かに......。そうですよね......。

上司:ただ、さっきも言ったように仕事のやり方を改善する大切な仕事だし、Aさんにとってもいい経験になると思うんだよね。...どうだろう、引き受けてくれる?

部下A:......分かりました。やってみます。

上司:ありがとう。じゃあ、総務部長から連絡が来ると思うけど、何か質問があったらいつでも来て。

部下A:はい、ありがとうございます。

いかがだったでしょうか? まずは、この任せ方2.0がどのような構造になっているのかを解明していきましょう。

「任せ方2.0」の4ステップ

上述した上司と部下のやり取りは、以下のような4つのステップに大別できます。それぞれのステップを詳しく見ていきましょう。

Step.1 意義付け

まずは、任せる仕事の意義をきちんと伝えます。仕事の進め方や具体的なタスクなどではなく、最初に意義を伝える理由は2つあります。

1つ目は、仕事の目的を理解してもらうためです。任せる仕事の意義、つまり目的やゴールイメージが理解できると、仕事を進める中で発生する意思決定のよりどころとなります。「こんなことくらいで、いちいち相談しないでくれよ」とぼやいてしまいそうな部下がいた場合、意義が理解できていないことがほとんどです。意義が分からなければ、相談が逐一必要になってしまいます。

意義を伝える2つ目の理由は、部下の当事者意識の向上です。「目的を理解してもらい、やり方は任せる」という接し方をすると、任された本人は「自分の仕事」として受け止めやすくなるのです。結果、部下自身の創意工夫なども促すことができます。一方で「やり方を縛る」任せ方は、部下からすれば「やらされ感」しか感じられないただの作業になってしまいます。

意義付けで伝えるべきは、「組織にとっての意義」と「部下個人にとっての意義」の2つです。「組織にとっての意義」とは、言い換えれば「その仕事が全社・組織という目線で、どのような位置付けか」という内容です。

部下から見て「自分の仕事が何につながっているのか」を明確に語ることが求められます。一方の「部下個人にとっての意義」とは、「その仕事経験は、部下自身にとってどのような成長機会となるか」という内容です。部下のキャリアや能力向上にどのように寄与するのかも明確に語ることができると、仕事への取り組み姿勢が一変します。

つまずきそうなポイントを事前に伝えておく

Step.2「つまずきワクチン」

つまずきワクチンとは、部下が任せられた仕事を進めていく中で起こるであろう「つまずき」を、事前に告知することを言います。つまずきワクチンを行う目的は「部下の気持ちが折れるのを防ぐ」「取り返しのつかない失敗を防ぐ」という2つで、部下本人にとって少しチャレンジングな難易度の仕事を任せる際に、特に必要になります。意義付けをきちんと行うと、部下は「大役を任された!」「気合を入れて頑張ろう!」と前向きな気持ちになるはずです。

ただしこの前向きな気持ちは、仕事がチャレンジングであればあるほど「浮ついた」ものとなり、このまま仕事に突入してしまうと、思わぬつまずきがもとで一気に気持ちが折れてしまう危険性があります。そこで、任せる仕事の難所を伝えて、部下の前向きな気持ちを現実に引き戻しておく必要があるのです。

また、「ここでつまずくぞ」という予告は、言い換えれば「ここに気を付けろよ」というアドバイスでもあります。事前に告知しておくことで、仕事自体が止まってしまうといった取り返しのつかない失敗を防ぐことができます。

Step.3「再意義付け」

そして、再び意義付けを行います。つまずきワクチンが部下にきちんと伝わると、その分だけ部下は仕事の難しい面、マイナスな面ばかりを気にするようになってしまいます。そこで、もう一度前述の意義を伝え直し、視点を再度上げる必要があります。端的に表すと「難しい仕事ではあるが、それだけやりがいもあるんだよ」と伝えるイメージです。

Step.4「自己決定」

これらの情報を伝えた上で、自己決定を促します。必要なのは、部下が「自分でやると決めた」と感じることです。

「自らやると決めた仕事」と「やらされた仕事」では、部下の取り組みに大きな違いが現れます。「自らやると決めた仕事」であれば、目的を達成するための創意工夫を行い、トラブルに見舞われても最後まで諦めずに考え抜くようになるのです。上司が無理やりYesを促すような接し方をするのではなく、あくまで部下自身が決めたように演出する管理職の腕が問われます。

任せ方2.0の4ステップ

任せ方2.0の4ステップ

以上が、任せ方2.0の4ステップです。この4ステップを踏まえて、また前述の上司と部下のやり取りを見てみてください。「たかが仕事を任せるだけで、手間がかかるな」と思われたかもしれません。しかし、この手間は時間にして2~3分間程度のものです。この2~3分のひと手間を惜しまず、「任せ方2.0」をきちんと実践すれば、部下に任せた仕事の尻拭いをする時間が大幅に削減されるのです。

今回、調査結果を基に、部下をうまく動かすための「任せ方2.0」を見てきました。実は、この任せ方2.0にはさらにもう1つ、驚くべき効能があることが調査で分かりました。それは、「任せ方2.0」を駆使する管理職にマネジメントされている部下は、成長が早くなるという効能です。 次回(最終回)は、部下の成長という観点も絡めて、「仕事を任せることを通じて、部下の成長を加速させる」方法を見ていきましょう。

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