指示の仕方を変えると部下の成長が加速する|コラム|人材育成・教育研修

2016.11.24

本コラムは東洋経済オンラインに掲載された当社コンサルタントによる3回連載の寄稿記事です。第3回は、仕事の任せ方の進化形、「任せ方2.0」によって部下がどう変わるのか、その驚くべき効能についてご紹介いたします。

経験学習を体得した社員は圧倒的に強い

前回まで、部下にうまく動いてもらうための「任せ方2.0」という新しい接し方をご紹介してきました。「目標咀嚼(そしゃく)」をキーワードに、管理職の皆さんの仕事の任せ方を工夫すれば、部下は自然と動いてくれるのです。そのために、「意義付け」「つまずきワクチン」「再意義付け」「自己決定」という4つのステップを見てきました。

「任せ方2.0」で、部下は自然に動いてくれる!

今回行った大規模調査を分析すると、この「任せ方2.0」の驚くべき効能が分かりました。それは、「任せ方2.0」を駆使する管理職にマネジメントされている部下は、成長が早くなるというものです。

弊社が東京大学の中原淳准教授と共同で行った350社2,800人の調査結果では、「任せ方2.0」を実践している上司とそうでない上司、それぞれの部下の「経験学習の実施度」を比較したところ、統計的な差があることが分かりました。

「任せ方2.0」を実践している上司とそうでない上司では部下の「経験学習の実施度」に統計的な差がある

「任せ方2.0」で部下はどう変わるか?

「任せ方2.0実践が部下の成長を加速させる」という結果についてはいくつかの仮説が立てられます。任せ方2.0を実施する場合、適当な仕事の任せ方をした場合と比べ、部下の心境に2つの変化が現れると考えられます。1つ目は「仕事の自分事化」です。

「目的は理解してもらい、やり方は任せる」という任せ方をされると、部下は当事者意識を持って仕事に取り組むことができます。人間、本気で取り組んだ経験からこそ、多くのことが学べます。当事者意識を持って行った仕事は、成功経験も失敗経験も、次につながる貴重な学びとなるのです。2つ目は、成長機会の意識化です。

任せ方2.0では、「意義づけ」のステップで「個人としての意義」を伝えます。これがうまく伝わっていれば、部下は「自分はこの仕事を通して、こんな成長をしよう!」と明確に意識をして、仕事に取り組むことができます。結果、得られる学びが大きくなるのです。

経験学習を実践し習慣化している社員とそうでない社員には具体的にどのような違いがあるのでしょうか。

経験学習が習慣化していない社員は、「いろんな経験しても、できる人はできるし、できない人はできない」と考えているため、後ろ向きな言動が目立ちます。口癖は「ついてないなー」「○○さんは優秀でいいよね」など現状への不平不満が多く、仕事で失敗した場合には「飲みに行く、遊びに行く、早く寝る」などして、その失敗をすぐに忘れようとします。なるべく楽に済ませられる仕事だけをやって、失敗はしたくないというスタンスです。

これに対して、経験学習が習慣化している社員は「失敗も成功も、どんな経験も今後の糧にできる」という前向きな考えを持ちます。発言には「いい経験になりました」「次はこうしようと思います」などのポジティブなものが多く見られ、仕事で失敗した場合には「何が悪かったのか分析をし、次はどうすればよいか対策を立てる」という未来志向の行動がみられます。

経験学習の習慣化で、好循環を生み出す

このような経験学習の習慣が身に付くと、管理職である皆さんと部下との間で好循環が生まれてきます。前述したとおり、経験学習を習慣化している部下は「経験から学ぶ」という姿勢が身に付いているので、ある程度チャレンジングな仕事にも前向きに取り組めるようになります。たとえチャレンジングな仕事で失敗をしたとしても、次への成長の糧にできるからです。さらに、一度経験した失敗からきちんと学習するので、同じような失敗を繰り返すことがだんだんと少なくなります。

その結果、管理職から見れば「仕事を任せたくなる部下」になるのです。

こうなると、「任せ方2.0」を起点として、管理職の皆さんと経験学習を習慣化した部下の間で、好循環が起こってきます。管理職が任せ方2.0で仕事を任せると、部下が意義を理解した上で自然と動く。すると部下の仕事の質が高まり、管理職が手直しやサポートをする手間が少なくなる。同時に、部下は仕事の経験から学び、能力が向上する。管理職はまたその人に仕事を頼みたくなり、新しい仕事を任せる。そして部下はさらに成長する。つまり、「上司は仕事をうまく進めつつ、部下の成長も促進する」という理想的な状態になるのです。

管理職の成長機会もつくり出す

このような好循環が生まれると、部下だけでなく管理職である皆さんにも成長の機会がもたらされることになります。部下に徐々に仕事を任せることができるようになるため、管理職が本来行うべきマネジメント業務や、自分の役職よりも高い視点に立った仕事に着手することができるようになるのです。すると、管理職である皆さん自身にも成長の機会がもたらされます。このように、任せ方を工夫することで、巡り巡って管理職自身にも大きなメリットが出てくるのです。

任せ方2.0のスパイラルアップ

時に管理職は「部下が思いどおり動かず、自分の仕事がなかなか前に進められない」とすべてを投げ出してしまいたくなる場面がありますが、その突破口はとても身近な「任せ方のひと手間」にあるのかもしれません。任せ方を工夫すれば、部下が仕事を通じて成長するようになります。部下が成長すれば、管理職自身も成長の機会をつかむことができます。 管理職である皆さんが成長すれば、企業全体としても大きなメリットとなります。たかが「任せ方」と捉えていらっしゃる方が多いかもしれませんが、そこには企業を大きく成長させるチャンスが潜んでいるのです。今一度、部下への仕事の任せ方を見直してみてはいかがでしょうか。

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